第22話 順調な人助け



「第3魔法『土』【バレット】ォッ‼」

「ゴフッ!?」


 黄色い髪のお兄さんとルナセンサーのおかげで順調に救助が出来ている。


 僕達はあれから2人の獣人を助けた。

 毛むくじゃらの老人と気が弱そうな女性。

 多分老人は羊で、女性は犬だと思う。

 動物的に。


 でもアビゲイルさんみたいな感じじゃない。

 って感じ。

 顔は動物の被り物みたいだけど、ちゃんと表情があるから本物だと思う。


 ちなみに2人とも怪我していたけど、今は僕の魔法の効果で元気になっている。



 今はそんなこと言ってる場合じゃなかった。



 目の前に4人目の被害者がいるんだ。

 なかなか屈強そうな身体をしている...ゴリラ男さん、だね。


 それより結構な大怪我みたい。

 うつ伏せに倒れていて、意識はあるんだけど背中の傷が深くて血も結構流れてる。

 多分不意打ちを喰らってそのまま倒れたんだと思う。


「お、俺は、もう駄目だ。お前らだけでも、ゴフッ。」


(駄目じゃないから。

 諦めるの早いから。)

 


(ルナ?どれくらいかな?)

〈...中くらい...だね...〉


(了~解っ!)


 僕は地面に膝をつき、ゴリラ男さんの背中に向かって両手を伸ばし唱えた。



『治れッ‼』



 僕は目を閉じているからどうなっているか分からないけど、



「お姉ちゃん、凄ぉいッ‼」

「奇跡の光じゃッ‼」

「や、ヤバすぎる。」


 3人の反応で分かった。

 大丈夫みたい。


 目を開けたらゴリラ男さんが上半身を起こしてビックリしてた。


「こ、これは?痛みが、傷がない?お、お前が?」


 僕はとりあえず笑顔で答えとく。


「僕が役に立てたなら良かったです。身体は大丈夫ですか?」


 僕の言葉にゴリラ男さんは目を見開き口をパクパクしていた。

 もしかしたら頭に何か障害が残っているのかも?

 

 何かの拍子に喋れなくなった!?


「あ、いや、だ、大丈夫ですん。」


(良かった。問題ないみたいだ。)

 ところで、

 大丈夫ですん?ってなんですん?


 なんか僕に緊張してる?

 身体が大きい割に震えてるけど?

 

 いや、さっきまで死にかけてたんだった。

 怖さを思い出したのかもしれない。

 


 僕は安心してもらいたくてゴリラ男さんの手を取った。


「大丈夫ですよ?安心してください。あなたはここにいます。ちゃんと生きてますよ?」


 優しく、ゆっくりと、安心させるように伝えた。


 目を合わせて言ったんだけど「ウホッ!?」って言って目を逸らされてしまった。

 耳が赤いけど何か怒らせたのかな?

 僕の言葉じゃ信用されてないのかもしれない。

 僕みたいな子供じゃダメなのかな...。

 

(どうしたら元気になってくれるんだろう?

 みんなで協力するにはどうしたらいいんだろう?)


 僕が落ち込みながらどうしようか悩んでいると、



「コレ!ちゃんとこの御方に礼を言わんかグーア。」


「す、スイヤセン。助かりました‼このグーア、貴女様に救われた恩は必ず返しますッ‼」


 毛むくじゃら老人の一声でグーアと呼ばれたゴリラ男さんは我に返ったみたいだった。

 元気そうならよかった。

 それに礼を言われると嬉しい。

 やってよかったって感じる。


 恩なんて別にいいんだけど。


「えと、グーア?さん。動けそうでしたら僕達と救助手伝ってもらえませんか?」


「よろこんでッ!このパツール村を救って下さるなら尚の事ッ‼」


 僕の願いにゴリラ男さんは立ち上がり、二つ返事で答えてくれた。

 オーク退治という意味では黄色い髪のお兄さんの方が役立ってると思うんだけど。

 

 いや、どっちが上とか関係ないか。

 僕は出来ることをすればいいだけだから。



(ルナ?次は?)

〈...赤い人...危ない...あっち...〉



(赤い人?...アビゲイルさんッ!?)



 僕はその場に立ち上がった。

 

 だけど足に、力が入らない?

 その場に尻もちをついてしまった。


「あれ?...立てない?」



 こんな時に魔法を使い過ぎた反動か僕は立てなくなってしまったのであった。


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