第15話 ここは奴隷のいる世界



「知らない世界を見てみたい、か...ふふっ。」



 僕のやりたい事を聞いてアビゲイルさんが僕を見て小さく笑ってる。

 そんなにおかしかったかな?少しムスッとした。


「いや、すまない。私の小さい頃を思い出したんだ。私も同じだった。」


 アビゲイルさんも子供の時に世界に興味あったんだ。

 誰だってそうかもしれない。

 僕は子供だから分かる。

 未知なる世界、ワクワクの塊。


 いろんなことを知りたい、触りたい、感じたい、見たい、

 興味の塊なんだ。


「だが、現実は甘くない。」


 腕を組んで真剣な瞳でアビゲイルさんは僕を見てくる。

 そう言うアビゲイルさんに僕は頷いた。


 僕にも分かる事があったから。

 この世界には魔物がいるんだ。

 無慈悲に人を襲って、人を食べる生き物がいる世界なんだ。


 それに、自分の事は自分で守らなくちゃいけない。

 自分の事は自分でどうにかしなければいけない。

 ご飯も、洗濯も、寝るところも自分でなんとかしなければいけない。


「1人で出来るのか?それに女の子1人だと連れ去られるかもしれないぞ?奴隷にされるかもしれないぞ?」


「え?奴隷?それって...?」


「人に売られて、一生を掛けて尽くさなければならないか、一生肉体労働させられるか...人生の終わりだ。それに犯罪、悪いことをすればもちろん奴隷行きだ。一度奴隷にされたら誓約の首輪を付けられ逃げる事すら出来ないぞ。」





(そんな事もあるのか。

 ...知らなかった。)

 



 僕1人で大丈夫かな?いや、無理かもしれない・・・。


 何も知らないこの世界で誘拐されて誰かに売られるかもしれない。

 何も知らないこの世界で知らないうちに僕は犯罪をしてしまうかもしれない。

 

 ただのファンタジーな世界じゃないんだ。

 現実なんだ、夢物語じゃないんだ、甘い世界じゃないんだ。

 お金の稼ぎ方だって分からないのに飛び出そうとしていた。


 子供1人が旅するなんてただの命知らずなんだ・・・。


 僕の考えは甘過ぎたのかも。

 でも、ルナの言うには会いたい。


 僕はどうすればいいか悩んだ。

 ずっとこの廃村にいる訳にはいかない。

 人のいる町に行って、ルナの言うあの人に会って聞きたい事がある。

 それに僕はこの世界で1人で生きていかなきゃいけないし。




 悩む僕にアビゲイルさんが溜息を吐きながらも優しく答えてくれる。


「私を頼ればいい。私は冒険者だ。の護衛として、依頼として受けてやる。報酬はいい、礼としてそれぐらいはさせてくれ。」


 僕はアビゲイルさんへの依頼という言葉に驚いた。


「頼ってもいいんですか?僕は何もしてないのに?」


「いや、さ。それにこんなに可愛い女の子を1人にさせられない。」


 か、可愛い?僕が?いや、確かに妹には似ているけど、自分が可愛いとは思えないんですけど。

 


 それにしてもいつ僕が助けたんだろう?

 もしかして僕の魔法でアビゲイルさんの傷を治した事?

 ルナのおかげだから僕がやった実感なくて忘れてた。


「えと、よろしくお願いします?アビゲイルさん。」


「あぁ、今日は遅いから明日からよろしく。それでは行こうか?」


「え?どこに?」


 あれ?明日からって言わなかった?

 今日はここで過ごすんじゃないの?


 僕の疑問にアビゲイルさんは当然の様に答えた。


「?ユウも汗かいたりして汚れただろう?『』は知らないのか?あぁ記憶が。」


「あぁ、おですか。分かりますよ~おくらい。確かに入りたい...え?お?え??僕と?アビゲイルさんが?えぇっ!?」



 何で当然の様に言ってんのッ!?

 まだ会って数時間なのになんで一緒にお風呂入るの!?


 たとえ女の子で子供でも僕の心は男の子のままなんだけど?

 なんで手を引っ張るの?

 拒否権は!?なんでちょっと嬉しそうなの!?

 


 僕はアビゲイルさんの錠から逃げれずに密室へと連れていかれるのであった。

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