第19話 まさかの緊急事態発生!

 地獄イベントの担当が決まった次の日、学院内の舞踏会や社交界が開かれる2階建てで円形状の建物に、多くの生徒が集まりだしていた。

 建物の中は、中央は吹き抜けになっており、2階には柵から1階を見下ろせる様になっていた。

 そしてステージは、入口の真反対側に作られていた。


「ここがコンテスト会場か。意外と、広いんだな」

「今はまだ、人が入ってないから広く感じるだけで、観客が入って来ると結構いっぱいだよ」


 私は、シンリと一緒にコンテスト会場の下見に来ていた。

 メインコンテスト開始まで、残り2時間あるが既に生徒たちが集まり、室内に出ている出店に集まっていたり、談笑していたりしていた。

 そのまま私はステージ裏へと行き、待機場所を確認していた。


 トウマはと言うと、衣装や台本を見直しているので、私が下見役でシンリと一緒に来ているのだ。

 本当は、去年出ていたアルジュに頼んだが、絶対に行きたくないと言っていたので、1人だと不安なのでシンリに頼んで付いて来てもらったのだ。

 待機場所やステージ構造も確認出来たので、一度帰ろうとした時にバッタリとルークに出くわしてしまった。


「げっ」

「クリスか。こんな所で何…あ~そう言えば、今年の前座はお前とトウマに決まったんだったな」

「なんだ、その少しとぼけた感じの言い方は」


 私の態度を見たルークは、少し最近当たりが強くないかと言われる。

 すぐに私は、そんな事はないお前の気のせいだと言い返した。

 ルークはあっそ、と別に対して気にしていなかった様に返事をした。

 そのまま私はルークの横を通りすぎて行った。

 だが、どうしても気になった事だけ伝える為に、私は立ち止まり振り返った。


「一つだけ言い忘れた。お前のその白い正装、性格に全くあってなくて似合ってないぞ」


 私は言いたい事を言い終えると、そのまま舞台裏から出て行くが、ルークは何も言わずに黙ったままだった。


「別に俺が着たいから、着てるわけじゃねぇよ……そんなに似合ってないか?」


 ルークが少し首を傾げて、控室へ戻って行った。

 メインコンテスト開始まで、残り1時間を切った頃には、会場にも多くの生徒たちが集まっていた。

 そして司会者がステージに立ち、観客を盛り上げたり、出場者の紹介などを始めていた。


 私は一度トウマと合流し、打ち合わせをした後、衣装を持って先に会場で待っていた。

 下見した際に、誰にも見られず着替えられる場所を見つけておいたので、そこで着替え今は舞台裏で、トウマの到着を待っていた。

 トウマを待つ間私は、しっかり緊張し始めており一人で待っているのが心細くなり、早くトウマが来ないかとそわそわしていた。

 その頃トウマは、自室にて衣装に着替えて下手なりにメイクをしていた。


「やっと綺麗に出来た! って、やっば! もう、こんな時間かよ、急いでクリスの所に行かねぇと」


 準備が出来たトウマは急いで、部屋を出て会場へと急いで向かい始めた。

 そして寮出る寸前で、アルジュに出会うと行ってくると挨拶を交わし、時間が惜しいのでトウマは、近道をしようと裏道を通って向かった。

 その直後、トウマと入れ替わる様に制服を着た学院の生徒が、オービン寮へと訪れた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 メインコンテスト開始まで30分を切ったが、トウマは未だに会場に現れていなかった。


「トウマ遅いな…何やってんだよ……まさか、ここで逃げたとかないよな」


 私は到着が遅いトウマを心配しながら、最悪な想定をしていた。

 その頃トウマはと言うと、謎の覆面マント集団に追われていた。


「マジで何なんだよ! いきなり襲ってきたと思ったら、次は捕縛とか何なの?」


 トウマは女装の衣装のまま、人が少ない裏道を走りまくり隠れながら、謎の覆面マント集団から逃げていた。


「何に対しての妨害なんだよ! 聞いた事ないぞ、地獄イベントの妨害だなんてよ!」


 背後から数名の覆面マント集団が、ロープやテープなどを持って迫っていた。

 トウマは、裏道から入り組んだ校舎の抜け道に行先を変更し、一気に振り切る作戦に出た。


「よし、このまま巻いてやるぜ!」


 そして目の前に抜け道の出口が見え、一気に走る抜けようと踏み出した瞬間、足元にピンと張らてたロープに足を取らて転んでしまう。


「いってぇ……へぇ?」


 転んでしまったトウマを覆面マント集団が、一気に囲うと口にテープをされ、袋を頭に被せられる。

 そのまま体をテープでグルグルに巻かれ、数人がかりで運び始めた。

 運ばれた先は、校庭などの用具が置かれる用具倉庫であった。

 そこでトウマは、頭に被せられた袋のみを外されて放置される。


「ほい! ふんのまへだ、おへえら! (おい! 何の真似だ、お前ら!)」

「これも貴方様のためなのです」


 トウマが塞がった口で、覆面マント集団に力いっぱい問いかけると、ボソッと小さく誰かが言葉を発していたが、トウマには聞こえていなかった。

 そのまま用具倉庫の扉が閉められ、鍵もされてしまい監禁されてしまう。

 どうにかしてトウマは、ロープやテープを剥がそうと、ジタバタしたりするも状況が全く変わる事はなく、ただ体力がなくなるだけだった。


「(マズイぞ、このままじゃ時間に間に合わない…いや、逆に考えればこんな目に遭ったんだ、出れなくてもしょうがないのでは……クリスには申し訳ないが)」


 トウマがそんな邪な考えをしていると、突然用具倉庫の扉が何度かノックされる。

 それに気付いたトウマは、全力で塞がれた口のまま声を上げるも、その後の反応が無くなってしまい気付かれなかったと諦めていた。

 直後、鍵がかけられた用具倉庫の扉がトウマの頭上を吹き飛んでいった。


「っ!?」


 トウマの視線の先には、制服を着た1人の生徒が立っていた。

 そんな緊急事態が発生しているとは知らず、私は緊張と悪い想像から、顔面蒼白になりかけていた。

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