第8話 特殊詐欺の実態

いつの日か覚えていませんが、確かあの日はお昼頃に六本木駅前でボスと待ち合わせして、一緒にランチを取っていたのですが、その時にスーツを着た4人組の男性が店内に来て、その4人の内の1人ボス的存在の人が、私のボスに話しかけてきたのです。

話の内容はお金の話でした。

4人組の3人が片手にぶ厚いアタッシュケースを持っていました。

私達はランチを終え、4人組の乗って来た車の中に入りました。

車の中には他にもアタッシュケースが沢山あり、その中身は札束でびっしりと埋め尽くされていました。

車にあったアタッシュケースを3つうちのボスに渡し、残りは海外に持っていくと言い、4人組はそのまま成田空港に向かいました。

私はボスと二人きりになった時にアタッシュケースのお金の事を聞きました。

ボスは『あのお金はビジネスをするためのお金で二人のお金だ』と言っていました。

その後、ボスのベントレーでボスのアジトにお金を隠しに行きました。


アジトは私が今までに見たことの無いお金の山がありました。

アジトは他にも数件ありましたが、アジトの出入りが許されているのは、私ともう1人の奴だけでした。

その山になったお金を管理するのも大変でしたか、いつも携帯する鍵はかなりの数になっていました。

私はボスに冗談で『お金を下さい』と言ったのですが

ボスは『幾ら欲しいんだ⁉️』と聞かれ

『1,000万円欲しいです』と言ったら

『じゃあ2,000万持っていけ』と言われ

私は2,000万を鞄に入れ、そのままボスと別れて家に戻りました。


ボスにはちょくちょくお金を頂いていたのですが、私はそのお金でやりたいことをやっていました。

私達がやっていた詐欺は投資詐欺がメインでしたので、現金のやり取りでそのまま頂いていました。

わざわざ現金を降ろしに銀行に行ったりすることはありませんでした。


私が使っていた受け子には男性だけでなく、女性もいましたので色々な人を上手く動かしていました。

私は電話を掛ける、掛け子のリーダー、その上のボスと月に数回会って食事をしながら色々な話をして、お互いに情報を共有していました。

私達のグループは何をするにも徹底していました。

お金を受取に行く受け子に取りこぼしはなく、尚且つ無理には捕りに行かせないので、怪しいと思ったらそのまま現地に行かせていた受け子を必ず引き帰らせます。

たった数百万、数千万の為に受け子が捕まっては今後もっと稼げるのに勿体無いですし、今後の事を考えて常に判断をしていました。

それが私達のグループでそして今でもアジトは存在します。


2012年12月26日私の携帯に1本の電話がありました。

電話の主は私の知人からで、その知人も詐欺をしている人でした。

知人は事務所として使用していたアジトが襲撃に会ったと言うのです。

その知人と先輩方が誰がやったかは解っているから、その事務所を襲撃しに行くから一緒に手伝ってくれと言うので、行きたくは無かったのですが、先輩方のお願いと言うこともあり、仕方なく一緒に行くことにしました。

夜だったこともあり、私は彼女の家に居たので、横浜から都内に向かわないと行けませんでした。

電車で行かないといけないので、金属バットを持って行くことも出来ずに仕方なく家にあった包丁を忍ばせ持って行くことにしました。

横浜駅から目黒駅に電車で向かい、先輩方と待ち合わせをした目黒駅に着いて、先輩方を見つけた矢先、何故か私に目を付けた警官数人が近付いて来たのです。

そのまま職質を受け、持っていた包丁の件で目黒署に連れていかれ、銃刀法違反で逮捕されました。

その後私は三田署に連れていかれ、20日間留置をされ、不起訴で釈放されました。

私は釈放され、そのまま彼女の家に帰りボスに連絡をして、次の日に六本木駅で待ち合わせをして食事をしながら仕事の話をしました。

私が不在の間はボスが色々してくれたので助かりました。

私がいない間、稼いだお金もボスから頂きました。

話の中でボスから九州の福岡に行ってくれないか⁉️と言うことを言われたので私は『良いですよ、行きます』と言って、1月の下旬頃に福岡の方に行きました。

ボスと私の間での話は、詐欺をしながらもまた新たな仕事をして欲しいと言うことでした。

私は福岡に居ながらも東京での詐欺はちゃんと上手く回していました。

現金の方も、私が居た福岡のマンションに届いたり、私が都内に戻った時に現金をまとめて受け取ったりしていました。


ボスから紹介していただいた福岡の連中と九州での色々な仕事をしていました。

福岡の人達の中でも、太田と言うボスがいたのですが、その太田と言う方とは毎日連絡を取っていました。

平日はこの太田とほとんど一緒にいて、中洲に飲みに行ったりしていました。

福岡には美味しい飯屋が沢山あったので、色々紹介して頂きましたし、人脈の方も色々な人を紹介して頂きました。

仕事の件での人集めもしていただいていましたし、太田さんと一緒に人を動かしていました。


福岡での仕事は福岡、大分、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島の九州全域の地方銀行を回って個人の銀行口座や法人口座を開設するのですが、私の名前で口座を開設するのではなく、社会保険証に載っている指名の人物に成りすまし口座を開設します。

しかし口座を開設するには、身分証と公共料金が必要なので、私達は事前に調べておいた空アパートの住所を覚えるなり、メモをし、ガス、水道、電気のいづれかの会社に電話をして基本料金の分だけの用紙を送って貰うのです。

次の日には基本料金が記載してある用紙がアパートに送られてきます。

そしてその用紙をポストから抜き、コンビニに行き料金を支払ってハンコを押して貰えば公共料金の支払い証明になります。

支払いが済んだ公共料金と身分証の社保とハンコを持って銀行に行けば個人の口座を開設出来ます。

口座が手に入れば携帯電話も契約でき、クレジットカードや消費者金融や時計のローン等も通ります。

そして会社での法人の方でも様々な契約げ出来ました。

まず、社会保険証を手に入れるのですが、社保を入手する役が福岡の連中の中にいました。

その役目のおじいちゃんがいて、その人が社保を作って来ます。

この人は福岡の中でも5本の指に入る悪だと言われていました。

おじいちゃんは1度に10~20人程の社保を作って来るのです。

作った社保は私達のアジトに届くようになっていて、常にマンションのポストに投函されています。

送られた社保には、氏名、生年月日、性別、会社名等が記載されています。

そこには住所が記載されていないので、住所を社保の裏面に書く為に住所を何とかしないと行けません。

住所をどうするかと言うと、まず空きアパートを探して、空きアパートが見付かったら、その空きアパートの住所を調べてメモをします。

そのアパートの玄関に付いているポストにガムテープを貼ってその上からマジックで『投函は下のポストで』と一言書いておくと、ちゃんと下のポストに投函されます。

そして、先程も書いたようにいずれかの公共料金の請求書を電話して送らせます。

後日ポストから請求書を持ってコンビニで料金を支払い、請求書と社保とハンコを持ってその足で銀行に向かいます。

銀行に行ったら口座を開設して、その後に開設した口座を持って携帯ショップに向かいます。

携帯ショップにはau、SoftBank、docomoの順番で携帯を作ります。

携帯は全てiPhoneを契約してタブレットも全てiPadを契約します。

auではiPhone3台、iPad3台

SoftBankではiPhone3台、iPad3台

docomoではiPhone3台、iPad3台

この様に契約するのですが、まれに複数契約が出来ないことがありその時は1台契約をします。

そしてもう1つ同時WILLCOMと言う携帯を4台契約して、これは私達の連絡用に使います。

東京や福岡の私達のグループに送りますので、受け子の連中にも渡します。

契約した携帯やiPadはある程度たまったらSIMカードを抜き取り海外の方に運び売っています。

銀行口座は1つだけ手元に残して、後は全て東京に送ります。

東京に送った口座は全て詐欺に使用したり、売ったりしています。

ちなみに銀行口座は都市銀行ではなく地方銀行を選び開設します。

九州では福岡銀行、福岡中央銀行、西日本シティ銀行、北九州銀行、肥後銀行、熊本銀行、大分銀行、豊和銀行、大分みらい信用銀行、長崎銀行、佐賀銀行、鹿児島銀行、十八銀行、山口銀行、ゆうちょ銀行等があり、この様な口座を開設して東京に送ります。

九州以外にも四国に行ったり、本州に入り山口県から徐々に攻めて行っていました。

そして次にクレジットカードを契約して、VISA、JTB、MasterCard等を作り、作ったクレジットカードは私が全て管理しています。

クレジットカードを作ってきた人には現金で20万~60万を渡していました。

私自身は数枚使用していましたし、残りは東京のアジトに送るか、私がアジトに持っていきます。

最終的には全て東京のアジトに保管して管理します。

クレジット契約が終われば、次に時計のローンを組みに向かいます。

ローンを組む時計は100万迄ならどんな時計でも通ります。

ROLEX、フランクミュラー、CHANEL、Cartier、BVLGARI、PANERAI、オーデマピゲ、HUBLOT等、様々な時計を通していましたが、売る時の価格はROLEXが良くアジトにはROLEXがかなり多くありました。

中古の腕時計もかなりあったので、中古品は私やボス、そして私が信用している奴にあげたり売ったりしていました。

ローンを通した際にお店の方で、是非とも弊社の扱っているクレジットを一緒にと言われるので、その時は遠慮なく一緒に通していました。

腕時計やクレジットも東京のアジトに送ったり、私が持っていったりしていてある程度たまったらその腕時計を一気に海外に流したり、手を組んでいる知り合いの連中に流していました。

東京には数ヶ所アジトがあったので、物によってアジトを分けたりもしていました。

アジトは東京だけではなく、横浜、埼玉、千葉、大阪、福岡等にあったので毎日色々な場所に行ったりと忙しい日々でした。

腕時計が終ると次に消費者金融に行かせてカードを作って貰っていました。

作るカードはレイク、アコム、プロミス等でそこで作ったカードは全て福岡のアジトで管理してまとめて東京に送っていました。

私の手元には常に数枚の消費者金融のカードがあり、好きに使っていました。

私は服や家電等良いもが沢山揃っていました。

部屋にはお金も常に凄い額があり、下で動いてくれていた連中には困らない分だけのお金を渡していました。

私のボスからは

『常に下で動いてくれている連中には絶対にケチらないでお金を渡せ』と言われていたので、私はちゃんと渡していました。

私が住んで居た所から、福岡のアジトは近くにあったので自転車で移動をしていました。

長居することはあまりなく、殆どが外食で関東から来た友人、知人、後輩、彼女らを呼んでは、食べたり飲んだりをして、ホテルを取ってあげて遊びに来て貰っていました。

逆に月に数回、東京に戻りボスと食事や打ち合わせをして、彼女に会いに戻ったりもしていました。

私が地方のアジトに行くときは、地元の信用している奴と待ち合わせをし、そのアジトに保管して在るもののチェックをします。

私は特殊詐欺を通して沢山の良い体験、思いをしました。

ここに書けないようなことも沢山ありましたが、特殊詐欺の内容に関してはこの辺にしとこうと思います。

これが現実で、私達は相手が困るとか、一切考えません。

これが仕事だと割り切り、お金を儲けたいと言う欲のある人間が騙され、株やギャンブルと同じ位に考えています。

誰が儲かれば、誰かが損をする、ボードゲームな様なものです。

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