VRゲームを「運営AI」に管理させると(作者的に)便利だと思った話 後編
●ユニークスキル授与
広告でもたまによく見掛けそうな、
【ユニークスキル◯◯を習得しました!】
「こ、これは、僕の能力なのか!?」
的な事になる抽選が、ゲームごとに行われている設定です。
この選考基準もゲームタイトルや、それを司る運営AIの目的次第で千差万別です。
素直なところでは、単に腕の良いプレイヤーが選ばれて競争を促す為なのかも知れません。主人公補正の表現としてはオーソドックスな展開かと思われます。
逆にその
あるいは、無作為に選んだプレイヤーに無敵の能力を与えるとどうなるかと言う、人間観察かも知れません。
もっと大局的に、ゲーム世界に大掛かりな変革・演出をもたらす為の駒とするべく、相当数のプレイヤーに与えられるパターンもあるかも知れません。
いずれにせよ、何万人の中から目的に応じて、適切な人選を行えるのはAIならではと思います。
私の作品では、別ゲームへのユニークスキルの持ち越しは出来ない事になっています。
その時点で、スキル保有者は別ゲームへの移住がしにくくなると思われます。
そのゲームに縛られるのか、それとも越えていくのか、と言う選択だけでも結構なドラマが生まれると思います。
そして私個人はですが、SF的ブラックジョークとして、大抵「旨い話や棚ぼたには裏がある」と言う含みを持たせる事が多いです。
●
現実世界と遜色の無い解放感をVR空間で維持するには、プレイヤーが狭さを感じないだけのエリア面積は必要かと思われます。
ゲームタイトルによっては10年以上、そこで生活するとなると、日本列島程度の大きさがないと探索し尽くして飽きるプレイヤーも相当数出る事でしょう。
(作中では、どちらかと言えば老舗タイトルの一ヶ所に留まって、変化に乏しい生活を構築したまま十年経ったような、安定志向のプレイヤーが問題視されていましたが、それはさておき)
幸い、デジタルデータで万物が作られるVR世界では、資源の心配だけはありません。
とは言え、現実の日本と等倍のオープンワールドを、人の手で作るのは困難です。
田舎の外れで鬱蒼と覆い繁る草木に隠された、小屋の残骸さえも余さず生成するには、機械の演算能力が必須となるでしょう。
地球を舞台としたタイトルであるなら、現実のそれをそのまま取り込んで、トレースする事も可能でしょう。
ヒャッハースローライフの世界がそのパターンで生成されており、オープン前に核戦争相当のTNT爆弾でもシミュレートし、破壊を加えたのだろうと思われます。
これまた余談ですが、ヒャッハースローライフのような地球トレース型のオープンワールドでは、某夢の国のテーマパークをも生成してしまい、ゲームメーカーが法的に(ハハッ!)されかかるなどの問題も起こったりします。
地球を一瞬でコピーしつつも、
(人間には出来ない、機械的な知性)
そうした著作権問題に引っ掛からないよう、そこだけ架空のテーマパークに摩り替えるなどの判断も、AIの大事な役目となるでしょう。
(機械には出来ない、人間的な知性)
●人間には思い付かない画期的なイベント企画
恐らくAIとは、限りなく人間に近い自我が実現したとしても「明日死ぬかも知れない」と言う性急さだけは再現が難しいのでは、と思います。
すると、物事を考えるスパンが、我々人間よりも遥かに長期になると思われます。
私の作品では、運営AIが1000年単位で物事を構えているとしました。
結局、10年単位の些細な揺らぎで1000年後のビジョンはブレまくる筈なので、現状では「ゲームのオープン当初から20年後のマンネリ化を予期し、手を打っていた」程度に留まってはいますが。
次回作では、TRPGのゲームマスターのような「常に交渉の余地がある運営AI」をフワッと考えております。
例えば、初期状態では単なる警察署だった場所で、
「マフィアから押収した銃器が保管されている可能性もゼロではない筈だ」
とAIに持ちかけ、それが認められた瞬間、武器が
今回、この運営AIと言うものを二作に渡って書いてみた感想としては“神様”を作者の思い通りに動かすハードルが低く、そうした意味で“便利”だったと言う印象でした。
運営AIが神様と違うのは、信仰心に依らず実在が確信されていると言う事と、直接的な干渉を人間が認識出来る点でしょうか。
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