夢を追って飛び出す
先日、義姪(高校2年生)が「絶対に声優になる!」として親族から猛反対を受ける場面に遭遇しました。
こういう場合、物語では反対をする親族が悪者に書かれがちですが、果たして手放しで応援する事だけが正義なのでしょうか。
少なくとも「声優になる!」と宣言した段階では、どちらに理があるかは判断できません。
このケース、結論から言えば私が「もし血縁者なら」彼女を応援出来ません。
何故かと言うと、現段階で声優になるための計画が全く見えてこず、プレゼンも不充分だからです。
私も声優業界には明るくないものの、進路をどうするのか? どういうメソッドの訓練をしているのか・していくのか。最低限、ゴールまでの道筋を明確にして欲しいと思います。そうすれば、必死に調べると思います。
また、憧れの声優を訊いた所、推しの男性声優の名前しか挙がらなかったのも残念な点でした。
「あの人のようになりたい」ならばまだ目標達成の立派な原動力となり得ますが、ただ単に「好きな異性の声優に憧れて」では、早晩に脱落するのは目に見えていると思います。
そして更に厳しい言い方になりますが「元々、声優向きだと思わせる声・話し方」の人は稀に居ます。身も蓋もないのですが、初期ステータス……才能です。
私の耳としては、彼女にそれがあるとも思えない。所詮は初期ステータスだと思うので、レベルアップで覆せない事は決してないが、現段階で親達を説得する武器が何もない事になります。
一方で「たかが義理の叔父にすぎない身」としては、飛び込んでみれば良いじゃないか、とも思います。そして、叩きのめされて伸びる芽があるとしたら、それもまた本物では、とも。
これは他人事と言うより「ちょっとやってみようかな? ダメ元ダメ元」と言う程度の動機で芽が出せない現状が決して正しいとも思っていないからです。
最初の動機がどうあれ、その世界に飛び込んで初めて得られる熱意もあって良いと思います。
私の現職の創業者とて、割りと適当な消去法で現在の業種を選び起業したと言いますし。
けれど今の時代、それで失敗した場合のリカバリーが難しい。
結果、姪の親族が言う「安定した仕事」に就く為に心を砕かねばならない。それを、最も夢に満ちているであろう高校生……ともすれば中学生にすら強要せねばならない。
とにかく何が言いたいかと言うと、夢を追い始めた人物の最初の関門「家族・親族」と言うのは、その時代・世界の最大公約数的に“正しい側”に居ると言う事です。
現代日本に限らず、どんな世界観であっても。
声優を賞金首ハンターだとか、海賊王だとか言い換えても同じだと思います。
そして夢を追う者にとって、それを引き止める家族と言うのは「最初に打ち負かさねばならない相手」では無いかとも思います。
だから説得だとか、話し合いだとかで解決すると言う認識自体が間違いです。
既に血縁の甘えを捨てて、戦わねばならない段階なのです。
先日ちょうど、とあるバラエティ番組で、学校を辞めて絵の道に進みたい人が親に反対されていましたが、実際の作品を見せて納得させた話がやっていました。
親のエゴでこの才能を摘んではならない。そう、実力で知らしめたのです。
第三者の立場としても、これが一番すんなり納得できる流れかと思います。
絶縁してでも振り切る事も可能ではありましょう。「家族は誰もわかってくれない」と自己完結して。
しかし小説の人物にそれをさせるとしたら、やはり読者の目もある事を忘れてはなりません。
本当にその出奔劇が格好良いものなのかどうか。
一方で、家族側にも責任のある態度が必要です。
まずそれに反対するのであれば「この人に反対されるのであれば考えねばならない」と思って貰えるよう、日頃から信頼関係を築かねばなりません。
普段から自分を否定してばかりの家族では、いざ大事な時に反対されても真剣に受け止められません。
家族を一方的な悪者にしたい場合はこの限りではありませんが。
そして、いざ彼女(あるいは彼)が夢を叶えて成功した時に掌を返すような態度は、読者からも忌み嫌われる事でしょう。
それも、狙って描写するのなら有りと思います。
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