ABC
先日から会社の社用車に、運転評価システム的なものが搭載されまして。
外回りの仕事をお利口な運転で行ったかの評価が毎回ABCで下され、記録されるようです。
このシステムは自動車保険の評価も兼ねているらしく、次回更新時までの平均評価によって保険料の割引率が決まるようです。
つまり下手な運転をすると後で怒られるかも知れません。ブルブル。
魔物の脅威度から格闘ゲームのリザルトまで。
ある物事の“格”をABCでランク付けを行うのも、ポピュラーな手法ではないでしょうか。
娯楽作品では、これに最上級の評価としてSランクを加えたものが一般的でしょう。
個人的にはSランク以上は無い方が好感が持てます。
あくまでもABCの三段階と言うルールを崩さず、Sランクと言う例外に逃げない事、と言いますか。
冒頭に挙げた社用車の保険システムの例で置き換えてみると「今回の運転評価はSです」などと宣われても、真面目にやれ! となるでしょう。
命懸けで魔物ハンターをやっていても、これは同様では無いでしょうか。
「Aランクの枠に収まりきらない大物」を当てはめたのであれば、そもそもAランクを定義するにあたっての基準やルールに理がなかったのでは、とも思います。
また、基準やルールに理があるのなら。
過去の偉い人が定義し、現在まで根付いているであろうシステムであるなら「A以上の例外が出ました。これをSにします」と言う改変など、そう瞬時には起こせないと思います。
格闘ゲームでもSランクはおろか、SSだとかSSSだとかまであると気が遠くなります。
確かにCが最低評価でSSSが最高評価なのだから、よりSSSに近いほど良いだけの話じゃん、と言われるとそうなのですが……それなら数字で6段階評価にする方がわかりやすいのでは? とも。
わかるんです。アルファベットの方が格付けの可視化には便利だと言う事も、ことゲームなどのエンタメではSが3つも並んでいる! と言うインパクトを狙っているであろう事も。
しかし、ただでさえ難しいのが、B~SSと言う“中間値”の立ち位置です。Sの字のインフレは、まずそこをぼやけさせてしまうと思います。
中堅の立ち位置がわからないと言う事は、SSSランクがどれくらい偉大で、Cランクがどれくらいドベなのかもぼやけさせてしまうと言う事です。評価は相対的なものなのですから。
私もかつて、過去作で魔物の脅威度にABC評価を下される世界観を作った事があります。
しかしそもそも、Cランクのモンスター一匹ですら容易に軍隊が壊滅し、都市の機能が麻痺してしまう。そんな設定で一番悩ましかったのが、やはりBランク魔物の立ち位置でした。
Aランク魔物はまだ、単純にCランクのそれより好き勝手に動かせば何とかなりましたが……Cが都市破壊級なら、Aは地域や国単位の被害にすれば良いので。
つまり、この手の評価とはABC(とS)のスタンプをぽん、と押すだけの仕事ではありません。
「何のために評価するのか」「どういう基準で判定がされるのか」が、それぞれもっともで合理的でなければならないのです。
また魔物の場合、出現(初観測)から分析、実際の評価が下るまでには相応のタイムラグもある筈です。
一個人が一見で「あいつはやばい、Aランク相当だ!」などと勝手に決め付けてはなりません。
だから私の作品における魔物については、ランク付けと非常に食い合わせが悪かったと言えます。
ランク付けを行う意義のある事柄であり、なおかつ綿密なルールのもと、精度の高い情報を与えねばならない。
だからこそ、私はSランク以上の存在については懐疑的なのです。
ただし。
半ば余談になりますが、4段階評価にするのは有効な場合もあります。
何故なら「中間値に逃げ場が無い」からです。
どういう事かと言うと、アンケートの回答を思い浮かべて頂ければと思います。
・とても良い ・良い ・悪い ・とても悪い
選択肢が四択だと、嫌でも「高評価寄りか低評価寄りか」を選ばざるを得なくなります。
もしも上記の選択肢の中央に“普通”があった場合、やはり中間値の割合がぼやけてしまい、客観的な評価が欲しい筈の質問者としては実になりません。
つまり「やや良い」部分の増強・「やや悪い」部分の改善に繋がらない。それらが一緒くたに“普通”で括られてしまうので。
それにした所で「Aの更に上にSが!」と言われるよりは、素直にABCD評価としてくれた方が信頼性は感じられると思いますが。
「あなたの運転評価はDでした(無慈悲)」
こうしたランク付けの元ネタ的なものは、恐らく企業で使われる“ABC分析”から来ているのでしょうか?
例えば自社製品のどれが、どの程度、業績に貢献しているのか等を、製品一つ一つにランク付けします。
売り上げ割合だとか、累積構成比だとか、詳しいことは各自ググって頂くとして、
全体の売り上げから色々計算して、次に「ランク付けの基準」を決めます。
例えば貢献度が50%ならAランク、30%ならBランク、20%以下ならCランクと決めて、自社製品に当てはめます。
やきそばパン……A
カレーパン………A
食パン……………B
バゲット…………B
昆布おにぎり……C
鮭おにぎり………C
こうしてランクを可視化・一覧にする事で、やきそばパンとカレーパンは在庫を増すべきでは? との判断ができ、逆におにぎりは数を減らしたり販売終了を検討出来ます。
また、この会社は惣菜パンが強く、米飯系は弱いと言うようなデータも取れる事でしょう。
勿論、季節や流行が変わると評価の変わる製品もあるので、一時のデータだけで判断できるとは限りません。
いつ“昆布ブーム”などが到来するかもわかりません。
現実でも、ランク付けと言うのは明確な目的とルールのもとで行われると言うことです。
自分でこの定義を作るとなると、やはり思った以上の大仕事になることでしょう。
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