ステータス・パラメータの是非
さて、所謂“テンプレ系”の作品を遠回しにチクチクやるような話題が続いて申し訳ありませんが、近頃のトレンドに関して最初から知ろうともしないのは……と思って調べてみると、創作論的にもタネの宝庫だったりしたもので……。
そういう作品に全く無知だった頃、とある“ステータス”要素のある作品(こういう表現で正しいのでしょうか?)
を読んで「強さを数値として可視化する手法が面白いですね!」などと感想を入れてしまった事があります。物知らない奴だな、と思われた事でしょう。
しかしまあ、テンプレ云々を抜きにした純粋な目で見ると、数字やランクで表現するやり方、それ自体は決して悪くは無いのですよね。
走行速度・アルコール度数・営業成績・摂取カロリー・ドラゴンボールの戦闘力・テストの点数……数字と言うのは、とにかく説得力がある。
その事柄を客観的に示すものとしては、便利なツールだと思います。
けれど、数字と言う物は“使い道”を明確にしておかないと、逆にピンとこない要素でもあるのです。
例えばファンタジー作品における
これが高ければ高いほど生命力が強く、敵の攻撃で倒れにくい。タフさの指標。それはわかります。
では、こう表現してみましょう。
HP:360,000
凄そうですね。
少なくとも、HP三桁が限界のドラクエ界においては不死身と言って良い数値でしょう。
けれど、貴方の作品はドラクエでは無い筈です。
こういうパラメータというものは、相対的な側面もあります。
つまり、他人のHPはどうか? 敵の攻撃力がどうか? と言う事とセットになると思います。
そこらへんの野良犬の攻撃力が1,000,000あったとしたら、このHP360,000とは、犬のひと噛みで蒸発する軟弱な数値だと言う事になります。
それなら別にHP:36でも構わないわけです。0が多い分、読み苦しいだけですし。
まあ、そんな極端な例は稀でしょう。
その世界の標準的な成人男性の攻撃力が5とかで、HP360,000とはそれをものともしない無双の防御力である、と明確に表現なさっているケースもあるとは思います。
しかしそれなら、斧で思い切りぶん殴られてもかすり傷しか付かない様子を、質感たっぷりに描写した方が早いし正確だと思います。
そこに、数値化の意味はあるのでしょうか? とも。
冒険者ランクにした所でそうです。
S級冒険者。作中の冒険者で最上位の強さなのはわかる。
しかし、S級とはどれほどのスペックなのか?
S級の魔物を殺したからS級冒険者? では、そのS級魔物の強さ、しでかした事の規模とは?
日本列島を一撃で沈めた巨大怪獣がS級。なるほど、それを始末した冒険者は確かに桁違いの強さです。
けれど結局のところ、数値やパラメータは、それを裏付けるアナログな描写なしには生きてこないのです。
かのFateなどは、サーヴァントの能力や宝具にABC評価(EXとかありますが)がされています。けれど、ランクの高い宝具が放たれた場合、広範囲が荒れ地になったりの描写がちゃんとされていますし“対軍”や“対城”などという区分付けで、何となくそれらが戦略級規模の兵器である事をしっかり説明しています。
その世界における戦術的・戦略的指標がしっかりしている。
同じ机上の論でも、ただの空論と軍事の専門家がとりあえず起こした(しかし明確なルールに則った)戦術評価では、天と地ほども違います。
そしてそうした兵器が効かないケース(Aランクまで無効)と言う防御的な特質は、自ずと「戦略級の攻撃が効かないタフネス」をちゃんと説明してくれているのです。
私がこれまで数字で表現した事と言えば、銃の威力をジュールで示したり、
“覚醒す”における主人公の親友・天田(古今東西あらゆる武器を使いこなす)のマグナム銃を連射する速度と
あと一応ネタバレに配慮して一部の情報を省きますが、同じく“覚醒す”に登場した“カタストロフィ・エデン”と言う、隕石を落とす魔法においての描写。
この魔法で呼び出された隕石が地表に衝突した場合のエネルギー量は3000万メガトン。
それを、人類史上最も高威力とされる爆弾“ツァーリ・ボンバ”(50メガトン)と比較。
そのツァーリ・ボンバの威力をアナログに表現すると、第二次世界大戦において地球上で爆発した爆薬総量の10倍になります。
まさしく、息をするように引き起こされた、人工の絶滅イベント。書いてる最中、あんまりと言えばあんまりな威力に、自分で笑ってしまったほどです。
そして、そんな魔法をモロに受けた敵役は……果たして滅びたのか、軽傷だったのか。クライマックスの話ではありますが、興味があればご一読下さい(露骨なステマ)
あとは氷の魔法を「絶対零度マイナス273度を気持ち下回る事で物理法則を歪める」とか「この町のそ総電力を補ってあまりある電撃魔法」とか書いたりもしています。
数字とは、簡潔に物事を表現できそうでいて、結構厄介なツールなのです。
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