伝えるために来た。
部屋は
「ご指名ありがとうございますっ♪」
一人の女性がこの
「今日は澪がぁ、い~っぱいご奉仕しますからね~❤」
水着の女性――
みおさんはいわゆる『萌え』をウリにしているのだろう。少々時代遅れだが、一定のファン層がいる手堅いキャラクター作りだ。その割には強引さも
一方で身体面は年齢に合わず童顔な上に胸がたわわに実っており、ロリ巨乳という空想の産物に限りなく近い。しかし体つき全体で見ると
成る程、写真通りだ。
「お客様は、どんなプレイがお望みですか?あまあまの甘やかし?それとも澪のことを……好き放題乱暴にパコパコしちゃいます?」
それでも澪さんは健気に職務に
据え膳食わぬは男の恥。
だが、オレにそのつもりはない。
「い、いえ……すみません。そうじゃなくて……」
「もっ申し訳ありませんお客様!他のプレイでも精一杯ご奉仕させていただきますのでっ!えっと、M派ですか、それともS――」
「ち、違うんです!オ……オレは、別にあなたを買ったつもりは……ないんです」
体を起こし、性的お誘いをきっぱり断る。
そう、オレは童貞卒業するためにこんな場所に来たんじゃない。
澪さん――本名、
これは、姫が去ってからすぐのことだ。
どうすればこの状況を打破出来るか、オレの脳細胞はそれだけに注力していた。
姫をいじめという理不尽の
だが、保護者なら話は別だ。学校側は無視する訳にいかないし、母親が立ち上がれば姫だって無理して耐える必要はなくなる。少しでも事態を好転させるため、その最初の一歩は彼女の母親に状況を知ってもらうこと。
そのためにも、早急に会う必要があったのだ。
では、どんな人物か分からない彼女の母親にどうやって会うのか。
その答えが仕事場に直接行くことだった。
例のラブホテルで身売りをしていることは姫の口から直接聞いている。情報はそれだけで十分。何故なら母親の顔は知っているからだ。
姫がお風呂に入っている間、着替えの用意をする他に
とはいえ出してしまったものは仕方がないので、オレはそれらを整理しておくことにした。その中身はハンカチやポケットティッシュ、
ということで顔も職場も分かっているのであとは現場に向かうだけ。捜査は足で稼げ、ということだ。
そして性欲盛る時刻である夜、職場に急行。
ラブホテルは基本二人以上で利用する場所でお一人様はお断りなことが多いらしいが、このラブホテルは珍しく一人での利用もオッケー。その理由は単純明快、相手はその場で選ぶことが出来るから。
男一人で来た客にはフロントが声をかけ、在籍している
要するにここはパパ活
そんなヤバめな場所なのだが、ビビっていても話は進まない。むしろあちら側からアクションを起こしてくれたのは
オレは意を決して、差し出された
そういう訳でオレは即座に澪さんを指名、今に至るのだった。
因みに先払いシステムなので、財布の中身はまたもやすっからかんになったぞ。結構高いのね。
「澪さん。あ、あなたは一児の母で……むっ娘の名前は姫……で、合ってますよね?」
「ど、どうして姫のことを知っているの……!?」
オレを
当たり前か。体目的の一般客かと思ったら突然身の上を探ってきたのだ、しかも的中させて。危険人物と勘違いされても仕方がない。
と思ったが――
「やだ、子持ちなのに
「そこを気にする!?」
――見当違いな理由に、反射的にツッコミを入れてしまった。
もうちょっと危機意識持ちましょうよ、澪さん。
「あ、あの……オレ、はっ灰原良太って、いいます」
「どうも、桃城澪です」
しかも普通に
「……それで、灰原さんは何しにここへ?」
そうそう、大事なのは本題だ。
澪さんの独特な天然ノリに流されるところだったぞ。
「その……む、娘さん……姫さんのこっ、ことで来ました」
「姫のこと?あなた、うちの姫とどういう関係なんです?」
「そ、それは……」
姫との関係。
その問いに、オレは一瞬言葉を詰まらせる。
散々悩んだことだ。
自分の気持ちに整理をつけられず、ずっともやもやの未分類だったこと。
だが、それはもう終わりにしよう。
「姫の……――恋人です!」
オレが出した答え。
心の奥底で眠らせたままだったそれを、高らかに宣言した。
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