第242話 水管橋 🌞



 目立たない黄緑色に塗られた橋は、自分の身の上が残念に思われてなりません。


 なぜって、橋は橋でも、河川の上に水道管を通すための橋ですから、人も自転車もバイクも車も大型トラックやダンプも渡ってくれないので退屈きわまりなく、まあ、せいぜいが川上に架かる鉄橋を渡る電車の振動を感じるのがせめてもの慰みで……。

 

      *

 

 そんなある日、水管橋は自分の上を吹き過ぎる風の声を聞きました。

 

 ――いつもお疲れさま~。(´ω`*)

   あなたのおかげで、人間界では平穏無事な暮らしが営めるのよ。

 

 こんなさびしい場所に設置されてから何十年もそんな言葉を聞いたことがなかった水管橋は、最初、まさか自分のことを言ってくれているとは思いもしませんでした。


 でも、はっと気づくと、全長数十メートルの全身によろこびを奔らせました。


 それからの水管橋は、自分の身の丈なりの春夏秋冬を十分に楽しんでいます。

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