第168話 グラジオラス ⚘




 イトさんの小さな庭に、薄いピンク色のグラジオラスが咲き初めました。

 

 ――春なら芍薬、夏なら断然あたし!

 

 女王を自認しているグラジオラスは、地味な花など歯牙にもかけません。


      *


 ある日の午後のこと、それまで晴れていた空がにわかにかき曇ったと思ったら、生温かい突風が吹き寄せ、どしゃっとばかりに大雨が降って来ました。⛆ 🍃


 昨今の雨のえげつなさと来たら、ジャングルのスコール並みですから、1本の茎に数多の花をつけた、不安定な立ち姿のグラジオラスはひとたまりもありません。


 あわやというとき、となりに咲いていた白木槿しろむくげが、茂りの深い枝葉をグラジオラスに寄せかけるようして、縦横無尽に吹き荒れる暴風雨から守ってくれました。


 それからのグラジオラスは、以前よりしおらしくなったみたいですよ。(^_-)-☆

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る