第13話 オクラホマミキサー 💃





 考えてみれば、『相棒』とはかれこれ20年余りの長~いお付き合いになります。


 相棒の相棒は何人か入れ替わりましたが、視ているテツシはずうっと替わらず、杉下右京という極めて魅力的な変人とは、いつしか親友のようになっていて。💕


 年頃も同じ右京さんが明晰な頭脳で登場する限り、自分も元気でいられそうで。

 

 

                 📺

 

 

 そんなテツシは、ある回のエンディング近く、小料理屋の女将さんの述懐「発端は高校のオクラホマミキサーかな?」に年甲斐もなく胸キュンしてしまいました。


 文化祭の最終場面、校庭いっぱいに広がったフォークダンスで、軽快なリズムに乗って踊る相手がひとりずつ交替してゆき、いよいよ本命というときに、いきなり曲がthe end……あのときの落胆が、昨日のことのようによみがえって来たのです。


 セーラー服に三つ編みが清楚だった一年下の彼女も、一瞬、心残りな視線を投げかけてくれたような気がしましたが、勇気も、縁もなかったのか、それっきりに。


     

                 📣



 そううだつが上がるタイプではないと自認している自分に、長年、黙って連れ添ってくれた古女房には心から感謝こそすれ、一片の不満もあるわけではありません。


 ですが、地味を絵に描いたような生涯にも、青春と呼べる華やかな季節がたしかにあった事実を、中小企業を定年退職したテツシは、ひっそり温めているのです。


 ――おれの人生、万歳!🙌

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