第10話 山のお花見 ❀




 盛りを過ぎた街の桜並木がひときわ紅色の濃い桜蘂さくらしべをほろほろと降らせ、やがてさみどりの葉桜に変わろうとするころ、山ではひっそりと山桜が満開を迎えます。


 なかでも見事な老樹の下で、いましも動物のお花見が始まろうとしています。

 

 

                 🌸

 

 

 昨年秋、名月に浮かれて腹鼓を打ち過ぎ、筋肉痛が治らないタヌキの坊や。

 手袋が買えずに、お手てがしもやけでチンチンしているキツネの嬢ちゃん。

 柿の実を食べに里へ降り、保護団体にお仕置きされたツキノワグマの親子。

 獣医師夫人の胸の巾着袋で育てられて、山に放たれたモモンガの赤ちゃん。


 山に棲む動物という動物が、山桜のぬしの下に続々と集まって来ています。

 

 

                 🚌

 

 

 そのとき、あらら、険しいけもの道をエッチラオッチラ登って来たのは、トトロのネコバスではありませんか! 窓にはムーミンやスナフキンの顔も見えます。😺


 動物界のポップスでしょうか、ロックでしょうか、はたまた演歌かな?♪ ♬ 🎶


 音楽担当は、桜材製のギターリスト・カモシカ、切り株のドラマー・キツツキ。ヴォーカルはもちろんホトトギスで、ウグイス嬢もソプラノを合わせています。🐥

 

 

                 🎸

 

 

 渓谷を吹き上げるそよ風に赤い旗をなびかせているのは、たこやき屋のイノシシのオヤジ、クレープ屋のウサギのねえさん、やきそば屋のオコジョのにいさん。🐗


 お花見全体の仕切り屋は例によってヒグマの長老で、「オッホン! ええ、本日はまことにいいお日和で、ことさらきびしい冬に耐えて来たわれわれ動物は……」なが~いあいさつが始まりましたが、今日ばかりはみんな我慢しちゃいます。(^^♪

 

 

                🎤

 

 

 こんな感じでスタートした山のお花見は、今日のため各々が準備して来た出し物が引きも切らず、東の空に宵の明星が現われるまで、和気藹々とつづくみたい。🌠

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