マスク【オチまで1分】
白く分厚い医療用マスクを着け、超高層ビルの前でマスクをつけろとプラカードを持つ団体がいた。誰もが長袖に手袋をつけ、憎らしげにビルを睨んでいる。そんな中、短パンにTシャツ姿のひとりの若い男性社員がビルの自動ドアから出てきた。
「ちょっとあなた! マスクをつけなさいよ!」
抗議団体の中の中年女性はそう声を上げたが、男性社員は黙ったまま、ガムを噛んで挑発するように女性を見つめた。
「聞いているんですか!? あなた! 態度が悪いですよ!」
男性はガムを噛むのをやめず、挙げ句の果てに1ミリほどの薄さのスマホをポケットから取り出し、いじり始めた。
「まったく、そんな肌を出すような格好をしてマスクもしないなんて、考えられない」
中年女性の隣のおじいさんは同意するように二度頷いた。
「朝子さんのいう通り。返事ぐらいしたらどうなんだ! 偉そうに!」
とうとう男性社員はスマホを打つのを止め、彼女たちに画面を見せた。その画面に書かれていたのは、次のような一文だった。
『弊社の薬用ガムは噛むことで話すことが減り、飛沫を抑えることができる。その上口内を殺菌できると最新の論文で報告されましたよ。知らないんですか?』
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