携帯の目覚ましの音がこれでもかというほど、けたたましく鳴る。

 自分で設定した音とはいえ、感に触る音にきこえるのはどうしてだろうか。 

 手を伸ばして携帯の画面をスライドさせる。

 本当はまだ起きたくない。

 簡単に世界と隔絶した空間をつくってくれる、この柔らかな毛布の下でいつまでも眠っていたい。

 朝日なんて、見たくない。冬の澄んだ青空なんて、もっと見たくない。

 それでもやらねばならないことはあるし、駄々をこねたところで、きいてくれる人が居るわけでもない。

 がらんとした静かな部屋で、のそりと体を持ち上げた。

 嫌でも目に入ってくるものがあった。

 すました様子で部屋の隅にちょこんと置いてある、白い布に包まれた箱。

 妻であった彼女が、小さな骨になって入っている。

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猫をよぶ @somariko

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