猫をよぶ

@somariko

部屋

 真っ暗などこでもない場所に、ぽつんとひとり落とされた気分。

 当たり前に居た存在が手をのばしても、もう居ない。

 「ああ、好きだったんだなあ」と、あらためて気づいた現実に打ちのめされる。

 声がききたい、となりで眠りたい、すぐそばで笑っていてほしい。

 思い出は何ともうつくしい。

 睨み合ったことも、言い合いをしたことも、疑い合うことも数え切れないくらいあったはずだ。

 それなのに思い浮かんでくるのは、楽しかったことばかり。

 思い出はそういうふうに、できている。

 だから、うつくしい。

 だから悲しく、やりきれないのだ。

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