第25話 案内人って、まさかの…?!
テムライムの食事の味付けなんかは、リオレッドとそう変わらない。でも初めて食べるものとか見るものも多くて、毎食毎食楽しくご飯を食べることが出来る。
早く帰りたいなんて思ってたけど、昼ご飯を食べておいしさにいちいち感動した私は、やっぱり長居してやろうかって矛盾したことを考えた。
「それじゃ、リア。またあとでな。ちゃんと言う事聞くんだぞ。」
「もう、パパ。私子どもじゃないんだから。」
昼ご飯を食べ終わると、パパたちは一足先に行ってしまった。
残された私とティーナは会議室内で、ロッタさんが手配してくれたっていう案内役さんの到着を待つことにした。
「ねぇ、ティーナ。」
「は、はい。」
「疲れてない?大丈夫?」
私自体にやることがないのに、ついてこさせられたティーナなんてもっとかわいそうだと思った。でもティーナは私の言葉を聞いて首をぶんぶんと横に振って、「とんでもないです!」と言った。
「今日なんかここで休んでてくれてもいいんだよ。半分遊びに行くようなもんだし。」
"遊びに行く"と本音を言いながら伝えると、やっぱりティーナは首を横に振った。
「そ、そんなわけには…。」
まあ普通に考えて、私に"休んでて"と言われても"はい、わかりました"とは答えづらいわな。休んでほしいのは本当だけど、そうなるのもしょうがないか。
「本当にいいですよ。」
ティーナに休んでもらうという案を半分あきらめかけていたその時、私の代わりに誰かティーナに返事をする声が入口から聞こえた。
「え…。」
私もティーナも、驚いて声の方を振り返った。すると入口立っていたのは、半年ぶりに見る、
――――エバンさんだった。
「お久しぶりです、アリア様。」
え、え、え、え、エバンさん…?!
出迎えにも来てくれないし、そのあとも姿が見えないから、
もうてっきり会えないもんだと思ってたのに!
え、どうしてここに?!え?!
「アリア…様?」
「お、お久しぶりです。」
驚きすぎて思わず固まっていると、心配そうな顔をしたエバンさんが近づいてきた。近づかれたらもっと固まってしまうと思った私は、とりあえず何とか言葉を発してエバンさんをけん制した。
「ど、どうして…。」
ここにいるんですか?
と聞こうとすると、エバンさんは燃える瞳で優しく笑った。
「本日、アリア様の警護担当兼案内係を仰せつかっております。」
「え、エバンさんが…?」
「はい。」
ロッタさんが手配したのって、エバンさんだったの?!?
たしかに彼はテムライムの騎士だから警護って言われれば適任なのかもしれないけど、騎士王の息子が案内係なんてするもんなの?!
完全に油断していた私の動揺は全くとどまることを知らなかった。何か言ったほうがいいはずなのにただただ私は慌てて、うつむくしか出来なくなった。
「不満、ですか…?」
そんな私に、エバンさんは不安そうに聞いた。
そうじゃない、不満じゃない、どちらかと言うとその逆。
と口に出来たらいいんだけど、まだ動揺している私は、さっきティーナが私にしたみたいに大きく首を振った。
「い、いえ…。エバンさんのようなお方に、私なんかの案内にお時間取らせていいものなのかと…。」
「自分から、立候補させていただきました。」
「…え?」
不安に思う私のセリフにかぶせるように、エバンさんが言った。それに驚いて顔を思わずあげると、エバンさんは瞳を少し揺らして照れた顔をしていた。
「ロッタさんから一人派遣してほしいと連絡があったので…。私が行きますと自分で言いました。ですがアリア様が気を使われるのであれば…。」
「いいえ、あ、ありがとうございます。本日はよろしくお願い、します。」
やっぱりや~めたっ。
なんて言われたら、それはそれでショックすぎる。
そもそもテムライムに来たかったのだって、エバンさんに会いたいってのもあったじゃないか。ババアが何照れてんだ。
自分に言い聞かせながらそう言うと、エバンさんはにっこり笑って「こちらこそ」と言った。久しぶりに見るとイケメンにさらに拍車がかかっている気がして、めまいすら感じそうだった。
「ティーナ、ほんとに今日は休んでて。」
エバンさんとデートしてくる。
本当は心細かったけど、かといって3人で回るのもなんだか気まずい。そう思って言うと、ティーナは空気を読んでくれたみたいで「はい、かしこまりました」と言った。
「それでは、行きましょうか。」
「は、はい。」
私は遠慮がちに、エバンさんの背中をおった。パパ以外の男性の背中を追うのはひさしぶりだけど、なんだかすごくドキドキして、そしてすごくたくましい。
皆様お待たせしました。わたくし、17年ぶりのおデートに行ってまいりますわ。
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