第22話 え、なにこの文明の利器?!
「…リア様。」
「ん…。」
「アリア様、そろそろ。」
「はっっっっ!!!!!!!!!」
寝起きが悪いせいで、こんなシーンも定番化してしまった。
メイサやママの声は聴きなれているから起こされてもそう簡単に起きないんだけど、今日はティーナの声だったから、いつもより早く起きれた…と思う。
仮眠をしようとしていたはずが結構爆睡してしまったことに驚いて体を起こすと、ティーナは一瞬驚いた後、「お、おはようございます」と言った。
「お、おはよう。」
「リア様、急いでご支度を。もうすぐ朝ご飯のお時間です。」
「そっか、とりあえずお風呂…
え、朝、ご飯…?」
焦っていたからみすみす聞き流しそうになったけど、ティーナは確かにそう言った。まさかなと思って窓の方を見てみると、カーテンの隙間からはどう見ても朝の光が差し込んでいた。
「ティーナ?」
「はい。」
「まさかだけど、今って、朝?」
「は、はい。」
全然まさかではなかった。どうやらまた朝まで寝てしまったらしいという事実をそこで初めて実感して、私は思わず頭を抱えた。
「う、嘘でしょ?!」
「す、すみません。昨日起こしに参りましたが起きられなかったため、旦那様がそのまま寝かしててほしいと…。」
「パ、パァ…。」
いや、いいんだよ。気を使ってくれたってのはわかるんだよ。
でもテムライムの要人の方たちみんなに、寝坊助やろうだって思われてないかな…不安だ、不安過ぎる…。
「リア様、お時間が…。」
「あ!は、はい!急ぎます!」
時間はもう元には戻せないから昨日の失敗を取り戻すことは出来ない。でもまた朝まで同じことを繰り返したら、本格的にぐーたらなやばいやつだと思われても仕方がない。
私はベッドから飛び起きて、支度の第一段階を終えるためにもシャワー室へと向かった。
「え、なにこれ…?」
リオレッドのシャワーというと、頭の上の方にあらかじめお湯を入れておいて、流れてくるままにそれを浴びるって感じのものだ。前世で使っていたシャワーには程遠いけど、一応桶みたいな浴槽があるから満足はしていた。でもテムライムのシャワーには、蛇口みたいな取っ手があった。
恐る恐る、その取っ手を引いてみた。すると頭上からは暖かいお湯が落ちてきて、私は心底感動した。
「シャ、シャワーだ…。」
前世のシャワーと比べれば、勢いもあまりないしお湯が均等に落ちてくるわけではない。でもどう考えてもリオレッドと比べればずいぶん技術が発達していて、私は準備をすることも忘れて、呆然とただそのお湯に当たり続けた。
「ねぇ、ティーナ!」
久しぶりのシャワーに感動し過ぎてしばらく動けずにいたけど、意識が戻ってくると今の気持ちを誰かに伝えたくなった。誰かって言ってもそこにティーナしかいないことが分かっていたから、私はシャワー室から大声でティーナを呼んだ。
「ど、どうされましたか?!」
私が大声を出したのに驚いて、ティーナは慌ててやってきた。私は感動を目いっぱい伝えたくて、「見て!これ!」とまた大声を出した。
「すごくない?!これ!リオレッドと全然違う!」
「え、ええ…。」
私の勢いに若干引きながらも、ティーナは返事をしてくれた。一言言っても全然興奮が冷めやらなかった私は、ティーナが引いているのも気にすることなく話を続けた。
「すごい気持ちいい!リオレッドにもあったらいいのにね?!っていうか何で誰も教えてくれなかったんだろ?こんなにいいものみんな…」
「あ、あの!リア様!」
弾丸トークでしゃべる私を遮って、ティーナが言った。さすがにしゃべりすぎたかなと思って話を止めると、ティーナは目線を反らして「えっと」と口ごもった。
「お、お服を着られてから、もう一度お話しください。」
言われて気が付いた。私、裸だ。
みられたところでそんなに恥ずかしいこともないんだけど、裸でこんなに我を失って話を続けてしまったことに関しては、とても恥ずかしい。
「ごめんなさい、急ぎます。」
やっと正気に戻った私は、それから急いでシャワーをすませた。
これからきっとテムライムにはたくさんの感動があるに違いない。私は恥ずかしさも忘れて期待に胸を膨らませながら急いでシャワーを終えて、ティーナのいる部屋へと向かった。
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