第21話 テムライムへと降臨!


「みえっった~~~~~!」



2日なんてあっという間だって思っていたけど、船の上はすごく退屈で、永遠にすら感じられた。

もうすぐだって聞いて嬉しくなって外に出てみると、遠くの方に街が見えてくるのが分かった。



「リア、恥ずかしいぞお前。」

「着いたらちゃんとするも~ん。」



一人でキャッキャと騒いでいると、アルが呆れた顔で言った。あんなに不安に思っていたはずなのに、いざテムライムが見えてきたら確実にワクワクしている自分がいた。私ってやっぱり強い女だって調子よく思って、向こう岸に広がっている行ったことのない場所に思いをはせた。






「リア。もしかしたらお出迎えに王様がいらっしゃってるかもしれないからね。」



船はそれからすぐ港へと到着した。気を引き締めたとはいえ、まだ少し浮かれ調子の私をけん制するようにパパは言った。



「はい。」



その言葉で背筋を正して、パパの腕と腕を組んだ。そして相変わらず不安定なはしごを慎重に下りて、いよいよ、テムライム王国へと入国した。



やったぜ!



「お待ちしておりました。」



するとパパの予想通り、下では王様と宰相さん、そしてたくさんのビシッとした服のおじさんたちが立っていた。パパはその人たちに敬礼をして、私もそれに合わせて挨拶をした。



「この度は、お世話になります。」

「いや、それはこっちのセリフだ。よろしく頼む。」



王様は相変わらず、すごく柔和な姿勢で言った。そしてパパとがっちり握手をして、私の方をみた。



「アリアにも負担をかけてすまない。」

「いえ。テムライム王国に来られること、楽しみにしておりました。」



さっきとは打って変わってお嬢様モードで言うと、テムライム王は私をみて優しい笑顔を見せてくれた。



「視察ももちろんだが、テムライムの魅力も堪能して帰ってくれ。」

「ありがとうございます。」



そのつもりです。

まずは取り急ぎ、美味しいスイーツを食べさせてください。



と、思っていたのは秘密で、私はやっぱり丁寧に礼をした。そしてそれと同時に、来ているかもしれないあの人の姿を探した。



――――あれ、いない…。



しばらくキョロキョロしてみたけど、そこにエバンさんの姿はなかった。内心がっかりしている自分に驚いていると、宰相さんが「では…」と遠慮がちな声を出した。



「本日はお疲れだと思いますので、一旦宿舎へご案内します。」

「はい、よろしくお願いいたします。」



そう言って宰相さんが呼んだのは、馬車リゼルに似た乗り物だった。私たちが驚いて王様の方をみると、王はにっこりわらって「そうだ」と言った。



「設計図を基に作ったんだ。」

「半年足らずで…素晴らしいです。」



造りはだいたい馬車リゼルと同じように見えたけど、それはリオレッドより少し大きい感じがした。そもそもテムライムはリオレッドより広い国だってのもあるし、道路も多少広いのかもしれない。


そういう事まで細かく考える経験は前世を通してもないから、ちゃんと勉強しなおさなきゃなと思った。





「はぁ~~、やっと地上を歩けている!」

「お、お疲れ様です。」



案内してもらった宿舎は、王様が用意してくれたという事もあってとても豪華なホテルみたいな造りをしていた。一気にテンションが上がった私は、部屋に入るなり見るからにふわふわベッドに半分ダイブするみたいに飛び込んだ。



「あ、危ない…っ!」



するとそれを見たティーナは、驚いた声を上げてアタフタとし始めた。私は上半身だけを起こして、動揺しているティーナの方を向いた。



「ねぇ、ティーナ。」

「は、はい。」

「私って、どんな人だって聞いてる?」



そんなこと聞かれたって答えにくいだろうけど、念のため聞いてみた。するとティーナは少し考えた後、「聡明な方だと、聞いております」と言った。



「違うのよ。」

「え、え?」

「私って結構豪快な女なの。なんて聞いてたか分からないけど、少しずつ慣れていってね。」



ティーナはなんて反応したらいいか分からないって様子でアタフタとしていたけど、とりあえず「はい」と返事をしてくれた。私もそれに安心して、今度は全身の力を抜いた。



「あと少ししたらご飯だっけ?」

「はい、テムライム王がご用意してくださっております。」



時計を見ると、食事までは少し時間があった。安心してドッと疲れに襲われ始めた私は、まるでベッドに一体化したみたいにぺっちゃんこになった。



「ちょっとだけ寝ていい?時間になったら起こしてほしいの。」

「もちろんです。」

「ティーナも疲れてるだろうから、お部屋で寝ててもいいよ。」



そういうとティーナは「はい」と言ったけど、絶対に寝ないだろうなと思った。私は宣言した通りの豪快な女だから、ティーナが部屋から出て行くのを見送ってすぐ、布団もかけずにそのまま眠りについた。

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