第17話 人不足なのに、働いてない人がいるって、ま?


色んなものを見ることが出来て、私は満足した気持ちでパパたちとポチのいる方に向かった。満足したとはいえ、まだ課題も多い。なんとかしてパパをまたうまく動かさないとな~と考えを巡らせながら歩いていると、建物の間の薄暗くて細い路地のようなところに、街を歩いている人たちとは雰囲気がちがう、汚れた人たちが数人座っているのが見えた。



「あの人、誰?」



大人だったら気をつかってそんなこと言わないんだろうけど、何でも聞けるのが子供の特権だ。フルにその特権を行使して指をさしながらそう言うと、パパは慌てて私の手をさげさせた。



「あの人たちはね、リアとは違うんだ。」

「何が違うの?」

「身分がね、違う人なんだ。」



なるほどな、身分か。


現代社会に生まれ育つとそれがどんな感覚かよくわからないけど、この世界にはまだしっかりと"身分制度"が残存している。それが何段階に分かれているのか子供の私ではまだ把握しきれていないけど、私の知っている歴史で考えてみれば、多分商人の家に生まれた私は、真ん中くらいの階級だと思う。


そしてこの市場で働いている人たちは、それより一つ下くらいの段階。そして多分あそこに座っている人は、私の予想からしてみればそのカーストから、外れた人たちだ。



でも、身分が違うとかそんなことを言っている場合ではない。

この世界は慢性的な、人不足なんだ。人不足なのに働くこともなくただ座っている人がいるなんて、そんなのおかしいに決まっている。



今は助けてあげられないけど、いつかあの人たちもパパの会社で働けるように、私が制度をつくる。



昔ならそんなこと絶対に出来なかったけど、今の私に出来ないことはない気がした。私はその人たちを見つめて一旦「ごめんね」と心の中で呟いて、メイサに手を引かれるがまま、家に帰った。




「ママ、ただいま!」

「リアいい子にしてた?」

「うん!いい子だからワッフルせんべいもらったの!すんごくおいしかった!ママにもあげるね!」



お土産に買ってきたワッフルせんべいをママに渡すと、ママはにっこり笑って「ありがとう」と言った。袋の中からは相変わらずいい香りがしていて、後で私ももらって食べようと決めた。



「さあ、リア。手を洗ってらっしゃい。」

「はぁい。」



それから私はいつも通りの日常を奥った後、その日は早めにベッドに入って、これからするべきことを具体的に考えてみることにした。



まずは適当な場所に営業所の確保する。そしてそれに合わせた人員の配置をしなくてはならない。

街に今日初めて行った私は、周辺の街に確保できそうな人員がいるのかどうかすらわからない。でももしいないとしたら、今働いている人をそちらに移動させなければいけないかもしれない。


としたら、寮のみたいなものを作る必要があるかもな。

勤務地手当みたいなものをつければ、みんなそっちに移動したがるんではないか。


ってかそもそも給料体系ってどうなってんだろ。パパが従業員にお金を払っているんだろうか。



今いる人材をうまく使っても、多分それでも人は足りなくなる。そうしたら街でみたあの人たちを雇うのが一番なんだろうけど、それには大きなハードルがありそうだ。


身分制度って全然ピンとこないけど、今までたくさん見てきたアニメとかドラマのことを考えたら、多分撤廃するのなんて本当に難しい。私なんかの手で負える問題なの?



いや、てか…。運送整えようって思ってただけなのに、どこまで思考回路が飛躍しているんだろう。



運送を整えるだけって、むしろそもそもはパパの仕事の負担を減らすだけって思ってたけど、思ってたよりかなり課題はいっぱいだ。やるべきことやってたら、そのうちこの世界でもおばさんになっちゃいそう。



いや、なんにせよとりあえず。

寝よう。


4歳の私の体力では、今日のお出かけはオーバーワークだった。

目をつぶったら眠気がやってきて、すぐに夢の中に引き込まれてしまった。



――――みんな、おやすみなさい。

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