断章・街の噂
とある都市のとある酒場
店内にはいくつもの卓が置かれ、その上には雑多に料理が並ぶ。
老若男女が喜怒哀楽を、酒と共に享受している。
「ね、ね。聞いた?国境近くのダンジョンの話。」
そう言いながら、身軽そうな皮鎧に身を包んだ女が、数名が囲む卓に滑り込んだ。卓に座る男女は平服で、すでに酒が入り寛いでいる様子。
「あぁ、リドベルの街の近くのやつだろ?調査をボチボチ切り上げるとか言ってたやつか?」
卓を囲んでいた、細身の男が応答した。
「おっそーい。古いよ、その情報!大きな問題無しってことで、数日の内に解放されるらしいよ。」
「へー。」
男の気のない返事に、女はぷくりと頬を膨らませた。思っていた反応と違ったようだ。
「リドベルのダンジョンって何だっけ?」
卓にいた眠そうな目をした女が、隣に掛けていた大柄な男にたずねた。
「何年か前に、突然活動を止めたダンジョンだ。」
「あぁ、あれか。聞いたことあった。下層から闇が襲ってきたとかなんとか。」
「そう、入り口まで闇に満たされた途端、扉が閉まり、どうやっても開けることができなくなったらしい。」
「逃げ遅れたやつらもいて、
「
一人沈黙を守っていた男がぼそりとつぶやく。
「まぁそうだな。ところが、最近、依頼で近くを通りかかったパーティーが、解放されたダンジョンを発見したらしい。」
「ああ、それで調査ね。」
「調査はだれが?」
「わからん。」
大柄な男が軽鎧の女に目線で促す。
「えーっと、誰だっけ?五つ星のパーティーで・・・忘れた!」
「ファイブが入ったって事は、そこそこ奥まで調べたんだろうね。」
眠そうな目をした女はそこまで言うと、興味を酒に戻した。
「じゃなくて!行こうよ!リドベル!」
「なんで?」
細身の男が相手する。
「稼ぎ時じゃん!今ならライバル少ないよ!ハゲタカ達早速向かったみたいだし。」
「うぇ、ハゲタカかよ。まぁ、あいつら儲け話には敏感だよな。で、どうすんの?リーダー」
大柄な男に目を向ける。自然と全員の視線が集まる。
「ここでめぼしい依頼が無ければ行ってみるか。」
「さっすがリーダー!わかってるぅ!」
軽鎧の女は、飛び跳ねて喜びを表す。
「ところで、リドベルダンジョン行ったことないんだけど、どんな感じなの?」
「無理をしなければ、4つ星でも充分、安全マージンは取れるはずだ。大きく特性が変わっていなければ、湿地エリアにいるカエルが割が良かった記憶がある。皮が防水加工に適しているらしい。あと肉も美味い。」
「ふーん。カエルね。」
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