第53話~この浮気者ぉ!~
「そ、空君と契約……?」
琴香さんはキョトンとしていた。いきなりすぎたか……。
「この浮気者ぉ! 主人には我がいるじゃろうがっ! それなのに琴香まで契約に誘うとはどう言う了見じゃ!」
するといきなりエフィーが頭突きを1発かまし、次に俺の襟元を掴んでぶんぶん揺さぶってくる。
「いや、だって契約できるならその方が良いかなって……」
「むぅ、たしかにそうじゃが……」
エフィーが揺さぶるのをやめて頬を膨らませる。不服そうな表情だ。
「あの〜、まず、契約ってなんですか?」
……そこからだったな。
「ふむ、契約というのは繋がりを持つような事じゃ。我と主人は一心同体! 身も心も繋がっておる! 琴香とは違うのじゃ!」
「変な対抗意識燃やすな!」
「へぶちっ!」
エフィーがドヤ顔で説明し出したと思ったらそういう事か。なんか腹が立ったのでチョップを食らわせといた。
「あ、他にはエフィーと契約した事で、探索者として力が上がったりもしたよ」
「えぇぇぇぇっ!? ……あ、だから空君はモンスターとかと戦えていたんですねっ?」
やはり強化系でも無いのに力を上げることができると聞かされ驚いた琴香さんだったが、なんか俺を見て1人で納得をしていた。
「……そういや一番大事なことを聞き忘れてた! エフィー、契約するしない以前に……契約自体ができるのか?」
だってもうエフィーと契約してるじゃん。これで一人一回とか言われたら……なんってアホな事を! これで出来ないとか言われたら琴香さんからしたら最悪だぞっ!?
「うむ、条件もあるが可能じゃ」
よしよ〜し、できることはわかった。あとはその条件ってのだ。
「条件って?」
「契約とは一心同体と言ったじゃろう? つまり契約には契約者との絆というか信頼関係というか……契約をしても良いと思う関係じゃ無いと成功しないのじゃ」
なるほど……。
「ちなみに主人が琴香と契約するとしたら、主人は琴香の使うような回復の魔法を使えるようになるはずじゃぞ?」
お、それは朗報。もしもの時は力以外でも他の人を守れるようになるって良いよね?
「だ、ダメです! 契約と言うのはすっごい魅力的ですが……空君本人といる意味が無くなってしまいます! わ、私が幾らでも回復するので、それはやめてください!」
と思っていたら、琴香さんから思いの外反発が来た。いや、考えてみれば自分のお株を奪われようとしているんだから当然か。
「慌てるな琴香よ。さすがに琴香本人の回復量には及ばんのじゃ。お主は今、癒しの精霊なのじゃぞ? あくまで借り物、劣化品じゃ!」
エフィー? それは俺が人から力を借りてるだけのツギハギ野郎って言いたいのか? ……いや、本来ならクソ雑魚だし、事実だから言い返せねぇのが悔しい……。
「そ、それなら……」
琴香さんが納得したようで何よりだ。俺のガラスの心は結構傷ついたけど。おっと安心しな、必要経費だぜ?
「まぁ、主人は我がベースとなっておるからな! 琴香の契約は一回限りじゃが、我との契約上書きはあと8回も残っておるのじゃぞ? 羨ましかろう?」
エフィーがまたマウントを取る。なんだ? 俺の胸ポケットに隠れてあまり出てこれないから影が薄い、空気になってしまうとか思ってんのか?
安心しろ、お前はマスコット&ペット枠という現在は唯一無二の存在だから。
「……回数が多ければなんか良いことあるんですか?」
「さぁ? 契約を更新するたびに、俺の力が増すってのは理解してるけど、何か特別な意味があるかは謎」
「じゃあ別に契約さえできたらそれで……」
「なんじゃ2人ともぉぉぉ!!! 今の我の数少ないアピールポイントをそんなあっさりとぉぉぉっ!!! 酷いのじゃぁぁぁ!!!」
あぁ、雑に扱われてエフィーの機嫌が! せっかくハンバーグで良くなったのに! ……明日もハンバーグで治るかな? いやさすがにそんなにちょろくは……無いと思いたい。
「よしよし」
俺はエフィーを落ち着かせるために頭を撫でた。
「ななっ、い、いきなり我の頭を撫でるとはどう言う了見じゃ! せめて撫でると宣言をせんか! びっくりしたじゃろう!」
エフィーは計画通り一瞬で押し黙り、撫でられた頭を押さえながら後ずさる。頬が少し赤いな。まぁあんだけ怒ってたから当然か?
「いやだ。エフィーを愛でるのに許可とか邪魔なだけだ。それにエフィーは存在してるだけで俺の癒しだから、アピールとかそんなの必要ないぞ?」
ったく、変な気を起こしやがって。俺はお前と出会えただけでも、これ以上ないほどの幸せだったんだぞ? そんでまだ短い期間だけど、ずっとそばにいたんだ。アピールとか必要ないっての。
「……そ、そうかの? 我はいるだけで良いのか?」
「あぁ。だから気にすんな」
そう言いながら、サラリとしたエフィーの頭と髪を優しく撫でる。
「……ふっふっふっ、そうじゃのう! 我は精霊王! その場にいるだけで無限大の価値がーー」
「うるさい」
ドスッ、と俺のチョップがいい音を鳴らす。なんかいつものテンションに戻ったと思ったらうざかったからつい……。見ると、エフィーがおでこを抑えて悶絶していた。
「あの〜、契約はいつするんですか?」
あ、ごめん琴香さん、忘れてた……。
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