トールたちの奇襲攻撃
トールは、封印したほどに古い記憶を呼び覚ました。
兵は神速を好む。
そんな言葉があるが……魔王の進軍速度は、まさに神速であった。
それも当然だと言える。
1年前の戦いで負傷を受けた魔王。再動するまでの1年間を魔王自ら用兵術に着手。
|戦闘教義(ドクトリン)として速度を優先させた。
最初の拠点に到達。小城とも言えるが魔王領土に近い距離とあって籠城戦を想定した堅城。
一度、交戦が始まれば、周辺から援軍が送られてくる手はずになっていた。しかし……
魔王軍は強烈な攻城を開始。その後、攻城に歩兵を残し、機動力の高い部隊は周辺から終結始める予定だった援軍撃破に向かった。
さらに魔王領から後方支援として増援が送られてくる。
こうやって、スックラ本国が想定するよりも速く首都に接近。
その首都決戦において、当時の王女レナ・デ・スックラは落命をする。
次にレナ・デ・スックラを襲名する後継者は幼い少女であり、先代の王弟が摂政となる……
少なくとも、かつてトールが経験したスクッラ崩壊はこうして起きた。
そして、今―――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「本当に来るんスか?」と聞いてくるは、スックラの正規兵。
トールが就任した初日に挑んできた男だ。
「来る。必ず……いや、すまない。もう来たみたいだぞ」
「なッ――――準備は万全スよ」と男は驚きを嚙み殺して、声も殺す。
彼だけではない。 トールが率いる軍隊は極度の緊張に包まれた。
肉眼でも確認できる先頭の男。 あれが――――魔王だ。
魔王が進軍を開始して、スックラ近隣まで勢力を伸ばして数年……
若い兵は、幼い頃から魔族の恐ろしさを聞かされ、
時には「魔王だ! 魔王が来たぞ!」と訓練を行うのが日常として育ってきている。
長年、染み込まされた恐怖は 払拭するするのは難しい。
だが、戦うのは……
「まだだ、まだ抑えろ」とトールの冷静な声。 それがなければ、我を忘れて飛びだして行った若い兵士が出たかもしれない。
「よし、訓練が成果が出ているな。……まだ、まだだ」
「――――」と呼吸を忘れるほどに緊張が――――
「今だ! スックラ正規軍――――出るぞ!」
魔王軍は進軍速度が速い。
しかし、生まれながらにして機動力の高い魔族。 騎馬……あるいは奇妙な生物に騎乗している魔族。
それらの後ろに歩兵が続くのだから、当然ながら軍は縦に間延びしており――――
トールは、魔王軍の真横――――土手っ腹に風穴あけるために軍を走られ――――
先頭に立つトールは、最初の魔族を斬り捨てた。
「伏兵だ! 伏兵が出現したぞ!」
「スックラ軍だ! ……コイツ等、強いぞ!」
奇襲を行うべき進軍していた魔王軍は逆に予期せぬ奇襲を受けた。
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