仮面の男 その正体
グリアは男を蹴り落とした……はずだった。 それが油断を生み出した。
男は落下する最中でも手にした鎖――――ケルベロスの首輪を離していなかった。
「ケルベロス！ 電撃を放て！」
「――――ケルベロスの肉体に範囲攻撃！」
飛び下りて回避するグリア。 体を一回転させて着地する。
「その着地膠着は絶対の勝機――――辿れ、我が魔力は氷結と停止に――――」
「詠唱？ 魔力を流して、ケロべロスそのものを魔力増幅装置に？」
「その通りだ！ ここで倒れるがいいグリア理事長！」
ケロべロスの足元から氷の柱が地面から生えていく。
「氷の棺桶だ！ 誰も来ない地下路の隠し部屋で永遠に封印されていろ！」
仮面で顔を隠しているが、それでも男には勝利を確信した笑みを浮かべているのがわかる。 しかし――――
「ようやく、魔法攻撃の射線が開いたか――――
一撃の魔法が、地面の柱を吹き飛ばした。
「なっ！ 魔法攻撃だと……後衛が隠れていたか。クソがっ！ 回復術士までいるじゃないか！」
笑みから一転してイラつきを見せる男は、すぐに勝利を確信した。
「だが、私の氷の棺を無効化するほどの魔力、相当の詠唱時間と魔力消費量が必要なはず。馬鹿ですね……前衛を見殺しにして、こちらの隙を狙えば勝てたものを！」
「――――やってみろよ」
「なんです？ その余裕は？ 時間稼ぎのハッタリなのはバレてるぞ――――辿れ！」
再び詠唱と共にケルベロスの体から魔力は放出され氷の柱が――――
「
紅い閃光。
音を置き去りに、全てを深紅に染め抜いて――――それは非常に暴力的であった。
ケルベロスの巨体が赤く――――そして白く変色して、消滅した。
「ば、ばかな！ 私のケルベロスが一撃で――――やられただと？」
トールの一撃。
直感的にヤバさを察知した男は、「あり得ない」という常識を殴り捨ててでも回避のためにケルベロスから飛び降りていた。
魔法の打ち合いなら不利……どころの話ではない。
魔導士同士が行う通常の戦いならば、魔法防壁を展開させながら、隙を狙って魔法を発射するもの……しかし、トールの魔法威力には、そのセオリーが通じない。
あの火球を抑え込めれる防御魔法は――――おそらくこの世界には存在していない。
「ならば、ならば」と剣を抜き、接近戦に持ち込もうと駆け出した。
だが、トールは――――
「もう止めよう」と帯刀した剣に手を伸ばす。その直後の出来事は、光は走ったとしか表現できない。
ゴトっと音がして男の仮面が落下した。
「初動が――――いつ剣を抜いたのすらわからなかった。……けれども！」
「止められたないのか！ エド！？」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
仮面の男。 国家転覆を企むテロリストたち……
どうしてだろう？ 誰が言い始めたのだろうか？
昔のシユウ国で使われていた言語を使うのならば、シユウ王室を狙うテロリストに間違いない……なんて勘違いを
しかし、考えてみたらわかるだろう。
むしろ、その国の古代言語を使って会話する者たちなら、シユウ国の国教を守る原理主義者である可能性が高いと言う事を――――
「いつから……一体、いつから私に気づいていたのですか？」
もはや仮面で顔を隠す事を諦め、エドは力なく言う。
「最初から……なんてここで言えればカッコいいだろうが、少し前に気づいただけさ」
「そのまま、気づかないでいてほしかった――――ここで貴方を殺さないといけなくなった！」
エドは剣を抜く。 その異常さにトールは気づいた。
「お前――――その剣は？」
「やはり気づいましたか？ 貴方が持つ魔剣アップシュタント――――いえ、今は魔剣シルグでしたか？」
「――――」
「これは、その後継剣と言うべきでしょ？ 貴方の魔剣とは兄弟のようなもの」
「お前、それをどうやって、どこで手に入れた！」
「やはり、動揺。この死合い、私にも勝機が生まれました――――魅せろ魔剣 グラオザーム！」
エドは魔剣を振るい、その効果を発揮させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます