元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!
第121話 スックラ領争奪戦の結末。そして唐突な過去編
第121話 スックラ領争奪戦の結末。そして唐突な過去編
マクマは大国の王。だからだろうか?
権力という面では世界最強と言えた。
だからこそ、権力という力だけではなく、暴力。
魔王の体を有し、直属の配下であった勇者クロスを取り込んだ。
過剰ともいえる力への渇望。
その根元となっているのは彼以外わかるものではない。――――いや、もしかしたら彼自身にもわからないのかもしれない。
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場所はハイドの教会。 人払いはされ、対面の席にはトールしかいなかった。
「俺にはわからんよ」とルキウス王は茶を一気に飲む。
行き場のない感情を飲み干したように見えた。
「王となり民の代表になり、それを捨てて個人の力を求める。ならば、最初から――――いや、言うまい」
「ふぅ……」と自身を落ち着かせるように深い呼吸を行った。
それから、こう続ける。
「マクマが起こした世界への反逆は、公にされることはない」
「それは……そうなるだろうな」
トールは同意するように頷いた。
「世界4か国を巻き込んだマディソン王の暴走。その影響力の高さから事件は秘匿される。国際法で裁かれる事もなく……マディソンの公式発表はマクマ王は大病を患い隠棲生活だ」
「実質、無罪放免……とはならないだろうな」
「あぁ、もはや王でなくなった者にマディソンは容赦しないだろうな。若い王に取っても、前王が権力を持ったまま引退するのは脅威だ」
「いつだって裏側は汚い世界だな。権力ってのは……」
「いや、何を他人事のように言っている?」
「?」
「お前も近々、俺の同業者になるのだぞ、トール王?」
「……」
「どうした? スックラ再建がお前の夢だったのではないか? さっさと、王位について、レナを娶ればよかろう」
「そうだな。そうなったら、俺はレナに王権の全てを譲って、旅にでも出るか」
「……」と今度はルキウス王が眉を顰める。
「俺には、お前の考えもわからぬ。王まで上り詰める。ある意味、冒険者の夢ではないのか? お前は、レナに国を返すためだけに戦い――――そして、すぐさま去ると言うのか? なぜ?」
「……なぜ?」とトールは、少し考えるも――――
「なぜか? 考えた事もなかった」
「トール……お前のレナへの献身の精神は、どこから来ているものだ? お前の過去に何があったのだ?」
「俺の……過去?」
――――12年前。 トール・ソリット……14才の頃。
そこは小さな村だった。 その村の名前はソリット村。
トールの生まれ故郷であり、彼の名字は村の名前からきている。
その小さな村にある小さな道場。そして看板には、こう書かれていた。
『ソリット流剣術』
中から声が聞こえて来た。
「とりゃあああああああああああ!」と裂帛の気合……と言うよりも怪鳥の鳴き声のような叫び声。
木刀を握る少年――――トール・ソリットの口から発せられている。
その相手は白髪の老人だった。
力みの入ったトールとは対照的に静かに――――まるで目を閉じてるように見えた。
飛び掛かっていくトールは――――
ソリット流剣術『破龍の舞い』
破龍の舞いは、武器破壊と防具破壊を目的とした剛の技。
加えてソリット流が鍛錬で使う木刀は、特別に折れやすく作られている。
ソリット流は、魔物と戦う事を想定した冒険者剣術の種類。
木刀とはいえ、怪我だけではすまない。ゆえに、一定の力が加われば折れて、衝撃を殺すようにできていた。
しかし、老人はトールの剣を受けない。
まるで幻影のような避けていく。
嵐のような剣撃を躱しきり、接近。そして――――
「そこじゃ」と人差し指をトールの胸元に軽く触れる。
軽く触れた……そのはずだった。 しかし、どのような力が加わったのか?
「ぐっあっ!」とトールは体が浮き上がり、道場の壁に叩きつけられた。
「うむ、立てぬか。 では、今日はこれまでじゃな」
老人は倒れたトールに背を向けて外に歩いて行く。 しかし―――
「お待ちを……父上」
その声に「むっ」と老人は足を止めた。
この老人こそトールの実父であり――――
『剣聖』 カエリ・ソリット
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