第85話 ルキウス王の猛攻 破れ行く白龍ジュニア――――だが?

 建国王伝説。天下泰平と呼ばれた時代――――突如として地下から、あるいは深海、または天空から魔物が現れた。


 それまで常識とされていた生物の生態とはまるで存在が違う魔物。


 当時の最新兵器です対抗は難しく、人類最大の危機と言われていた。


 魔法もなく、剣もない時代の話だ。 戦士たちの主軸となる武器は火薬を要した対人に力を入れた武器のみ――――栄華の繁栄と言われた人類の滅亡も覚悟されていた頃。


 王が出現した。 王は、人々に魔物との戦い方を教え――――剣を、魔法を人々に教えて――――そして、人類の反撃が始まった。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「それの鎧は、その時の物……いや、さらに伝説という信仰を得て、信仰は奇跡を呼んだ。人類を魔物から救った英雄の鎧――――貴様が竜種である以上は魔物! ならば、貴様の息吹なんぞは通じぬ!」


 ルキウス王は、灼熱の南国から、試される極寒の地に変化した地形を歩く。


 流石に気温差は抗えないのか、ブルりと震えるも一瞬――――


「白龍……いや、ジュニアよ! 貴様も男ならば『息吹』なんていう小細工は止めて、力で来い!」


 そのルキウス王の叫びに対して白龍ジュニアは――――


(な、なにを言っているんだ? この人間は?)


そんな感じで困惑していた。


(いやいや、鎧の神秘性で息吹を封じたってのはわかる。わかるよ? だからって力比べを要求? バカなのか? この男は?)


「はっはっは……何を恥ずかしがっている。力を――――貴様が誇るべき力を俺に見せろ!」


(――――やはり、馬鹿か? この男……ならば!)


 白龍は顎は開く。 『息吹』の二発目!


 超広範囲の息吹。 効かないと言っても、一瞬ならば凍り付くのは初弾で確認済み。


(効かないにしても、完全無効化できないだろう? ならば、動きを一瞬止めるだけでも、こと戦闘においてのアドバンテージは大きいのさ!)


二発目の『息吹』は、やはり地形を変え、気候を変え――――おそらくは、この島の生態系は変化させてしまうだろう……


 そんな二撃目。 凍り付き、動きを止めたルキウス王へ。


(遠く遠く、海から大陸の大地まで吹き飛ばしてやろう!)   



 体当たりを実行するために白龍は動く。しかし――――


(――――っ! いないだと!? 馬鹿な避けられるはずはない)


「避けられるはずもない。そう思っていないか?」


 その声はどこから聞こえてくるのか? ルキウス王は白龍の体に飛び乗っていた。


「息吹は超広範囲攻撃。しかし、発射されるのは貴様の口から――――ならば、避ける方法は容易に思いつくであろう?」


 ルキウス王は白龍の体は走り、その頭部へ近づいて行く。


「貴様の息吹が、横へ縦へと範囲が広がるよりも早く、前に出れば良いだけの話よ!」


 頭部にたどり着いたルキウス王は斬撃を白龍の頭部へ一撃。


 続けて――――


「答えよ世界――――我は全てを手にする覇王なる者――――世界よ示せ! 我が栄光を――――」


 詠唱を開始する。 


 国内最強の魔導士 宮廷魔術師筆頭エレファを師に持ち、既に超えたと言われるルキウス王の魔力は―――――


 『真・赤炎封魔焔』


 閃光―――― その威力は音を置き去りにして――――


 光を置き去りにして―――― 視界は漆黒へ――――


 嗚呼、感じるは熱。 焼け落ちる世界の咆哮が、ただ―――― 


 何が起きたのか? 放たれ、それが終わると世界が変化していた。


 白龍の息吹によって地形も大きく変化していたはずが―――――それはなかったかのように元に戻っている。


 まるで戦いが始める前の光景。 しかし、戦いはあったと断言できるのは横たわる白龍の体。


「流石の最強生物と呼ばれる竜種であっても俺の最強魔法が耐えれなかったか――――いや、待てよ? 貴様……まだ命が2つ? ほう、1つの体に3つの魂がある三重存在か」


 そのルキウス王の声に再び白龍が動き出す。 いや、動き出すだけではない。


 首が3つに分かれ―――― 背中にはなかったはずの翼が生えていく。


 それらの変貌に比べれば小さい事だが……尻尾も3つに増えた。


「凄いなぁ。俺の試算だと――――戦闘能力が3倍に増えている。いや、まだ跳ね上がっていく最中か?」


 今まで余裕を見せていたルキウス王に、初めて焦り――――若干、顔が引きって見えるのは気のせいではあるまい。


 それはほどまでに白龍ジュニアは強化され、今――――ルキウス王の前に立っているのだ。 

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