第78話 『ギルド地下ダンジョン』

 こんな都市伝説を聞いた事あるだろうか?


 ――――いや、冒険者なら、こんな噂を聞いた事が1度や2度はあるだろう。


 『冒険者ギルドの地下には非公式のダンジョンが広がっている』


 これは一部、事実である。


 ギルドの地下には、討伐ではなく捕獲を優先された魔物を閉じ込まれている。


 ただ、伽藍洞の空間が広がっていた冒険者ギルドの地下空間。


 それがいつの間にか、変化が始まった。


 存在しなかった壁が生まれ、地下空間は迷宮になった。


 少数だけだった魔物も、なぜか繁殖。 なぜか、地下空間に閉じ込めたと記録のない魔物も歩き回っている。


 言うならば『ギルド地下ダンジョン』


 一部の人間しか出入りの許されないダンジョンにトールは入っていった。


 見た目だけなら、ただのダンジョン。 しかし、ダンジョンの難易度ならば、最上位のランク。 魔物も捕獲を優先されるだけあって、希少性レアリティも高く、戦闘能力も高い。


 そんな中、トールが最初に遭遇した魔物は――――


 骨将軍スカルジェネラル 


 トールは発見と同時に攻撃を開始を行わない。


 相手がこちらに気づいていないのならば、まずは観察から始める。


(――――ただでさえ強敵。厄介なのは、手にしている武器。あれは魔剣か?)


 骨将軍が手にしている武器。毒々しいオーラというよりも、肉眼で見える腐臭のような物が立ち上っている。


(まぁ、考えるまでもなく毒属性の魔剣だな。触れただけで即死クラスの毒……いや、触れなくとも周辺まで腐食させている。――――近づかないよう魔法攻撃を優先させるか)


 観察を終え、戦術を立て終えたトールの動きは速かった。


火矢ファイアアロー


 魔法による先制攻撃。 腐食によるガスが魔剣によって発生していたのかもしれない。


 その威力は、通常時の魔法よりも威力が跳ね上がり爆発が起きる。


「――――っ!? これは俺も予想外」


 離れていたトールにまで火の粉が降り注ぎ、若干衣服も焦げが付く。


「まずいな。 この爆破音で他の魔物たちも集まってくるぞ」


 そんな事を心配しているトールだったが、目の前に広がる火の海から蠢く影が見えた。


 もちろん、それは――――


 骨将軍。


 この爆破の中心にいたはずだが、そのダメージは見て取れない。


「ノーダメージか。流石に魔物のレベルが高い」


 そんな感想を口にするも、すぐに余裕は消えた。


 骨将軍の魔剣が振る。


 腐属性の魔力を込めた剣撃。 離れた場所から魔法が斬撃がトールを襲う。


(受けるのはまずい。高範囲の腐食攻撃!)


 トールは大きく飛び上がり、天井ギリギリで反転。 重力に逆らい両足で天井に着地。


 重力が働きを取り戻し、落下が始まるよりも早くトールは天井を駆けだす。


 天井を蹴り、地上から見上げている骨将軍に飛び掛かる。


 しかし、骨将軍の反応は良い。 


 対空攻撃。 空中から迫りくるトールを打ち落とそうと腐属性の剣撃を飛ばす。


 ならば、トールは――――


 『空中歩行エアウォーク


 存在するはずのない足場を空中に作り、進行方向を変える事で骨将軍の攻撃を回避。


 避けられると想像すらしていなかっただろう。 骨将軍は無防備となり、その隙を狙ってトールは剣を走られせた。


 骨将軍の体――――胴体に斬撃の線が横に走り、その体は真っ二つ。


 骨の肉体が崩れ落ちていく。 だが、それだけ――――


 骨将軍は、上半身だけで起き上がり、倒れた下半身を拾い上がると無理やり引っ付ける。


 数秒という短時間では完全に回復するはずもないが、それでも満足したかのように動き始める。


 では数秒間。 その時間があれば、トールは何度も攻撃を行えたはずだが、なぜ攻撃を行わなったのか? 


 それは今のトールは、勝てばよかろうとなのだ……そんな目的で動いていない。


 新しい自分の能力を確かめるため。そのためにギルド地下ダンジョンにやってきているのだ。


 だから、骨将軍の回復を待ち―――― 『火矢ファイアアロ―


 「続けて、ソリット流剣術――――」


 再び、攻撃を開始する。

 

 「破龍の舞い!」

 

 

 

 

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