元SSSランク冒険者だった咎人は脱走して人生をやり直す! ~幽閉された10年で鍛えた魔力は最強魔導士に~ 若返った俺を捕まえようとしてももう遅い!
第50話 看守コリン・G・ハート 一方、トールたちは海へ向かう
第50話 看守コリン・G・ハート 一方、トールたちは海へ向かう
ブレイク男爵邸、そこにはハイドに心の臓を突かれて死んだはずの男がいた。
その男は言う――――
「私の名前は、コリン・G・ハートです」
「うむ? すまないが、看守の名前まで把握していなくてね。それで……君は何者だね?」
「はい、私はあの脱獄者 トール・ソリットを追って中央都市を探索していました。そして、その姿を見つけた時……一度、私には死にました」
「死んだ? 失礼だが、何かの比喩かね? 私の目には、君が健康そのものに見えるのだ。私も忙しい身でね……手短に頼むよ」
「いいえ、比喩ではありません。残念ながら」と言いながらコリンは服をはだけさせる。
「むっ……それは? どういう事だね?」
「はい、トールを発見して報告を……その時、私は心臓を一突きされました。 神父風の暗殺者の手によって……」
「神父風……トールの関係者。いや、レナ姫……まさか、スックラの
「さぁ」とコリンは肩をすくめた。 「犯人の名前まではわかりません」が付け加えた。
「幸いにして、死体と化した私を聖・ヨハン2世さまが救ってくれました」
「聖者の奇跡……」
「いえ、彼が有すると言われる天使さまが私を発見して、不死鳥の血を浴びて蘇りました」
「天使!? それに不死鳥……だとしたら」とブレイク男爵は言葉を止めた。
コリンという人物の話が事実だとしたら……目の前の人間は、もう人間の枠を超えた存在になっている。
「えぇ、おかげで不死身に等しい体。 それに天使さまから分け与えられた力もあります」
「それは、トール・ソリットと戦っても勝てるほどの力を――――」
「無論、ハッキリ言わせてもらいますと……余裕です」
「――――くっ! くっくっくっ……良いだろう! トールの居場所を掴んだと言ったな!」
「はい、あの者は、大胆にも名前を変えずこともせず、冒険者として復帰しておりました」
「なに? そんなバカな……」
「はい、信じがたい事にエルフの霊薬を使い風貌を変えておりました」
「エルフの霊薬。いや、ない話でもないか。戦後、行方不明になっているスックラの秘宝をあの狂信者が持ち出したとしたら……その戦力は個人が有す物ではないな」
「ですので、私に兵をお預けください。 猟犬部隊の指示権を――――さすれば私、自ら先頭に立ち。その首を差し出してみせましょう」
「うむ……いや」
断れるとは思ってもいなかったのだろう。 コリンは「はい?」と驚き混じりに聞き返す。
「今度は私も……私、自ら兵を率いてトールを捕らえる!」
ついにブレイク男爵、自らが猟犬部隊を引き連れて中央都市へ移動を開始した。
そして、その準備に慌ただしいブレイク男爵邸の中でコリンは微笑んだ。
(嗚呼、トール・ソリット……今の私には理解できる。人は嫉妬や恩讐では強くならない。人が成長するのに必要な因子は―――愛だ!)
「今度は、君を殺すために私は君を愛そう。憎しみを愛に転換させた私だからこそ――――次は愛憎劇を繰り返そう」
それを口にした瞬間、遥か距離を離れた場所にいるトールに強烈な寒気を感じる事になった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
だが、ブレイク男爵の秘密裏の進軍。 トールはもちろん、中央都市の住民の誰も知らない。
なので、普通だ。 誰もが普通に生活を送る。
無論、トールだって、普通に冒険者ギルドに顔を出し、依頼を受ける。
「Aランク冒険者を推定されていて、残っている依頼は……海への遠征か」
「はい、海でなにやら巨大な魔物が出現しているそうです。その影響か、他の魔物も荒ぶり人々を襲う……漁師町は死活問題となっています」
窓口で説明をする受付嬢の口ぶりは熱い。 ――――いや、熱いのは口ぶりだけではなく視線も……所謂、熱視線というやつをトールに向けている。
「はい、わかりました。すぐにこれをお願いします」と遮り、レナは依頼を受けると決定させた。
「レナちゃん……嫉妬よね、それ?」
「なっ、何を言うのですか! グリアさん! それを言うなら、どうして貴方は平然としているのですか?」
「そりゃ、私は正妻ですから」
「――――ッ!? そ、それはグリアさんが勝手に言っている事です」
「勝手に、別にトールさまも嫌がってないでしょ? そういうことよ」
「ど、ど、どういう事なんでしょう? い、いえ、後学のためにお聞かせください!」
「良い事? 男って生物は、女から攻められるのが嫌いな者なんていないのよ」
ここまで来たらレナは口をパクパクとさせ、顔を赤面させている。
「そろそろ止めに入るか」と腰を上げるトールだった。
「とりあえず、海への遠征で決定か。 準備は――――」
「水着ですね」とレナ。
「当然、水着だわ」とグリア。
「……遊びじゃないぞ」と反論を口にするよりも早く、2人から腕を掴まれて――――
「それでは水着を見に行きましょう」と2人に連れ去られていくのだった。
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