第28話 ヒロインは選択する

エリオット様が誘い文句にした言葉は嘘ではないようで、フランシス様の補佐を私たちに期待しているらしかった。

フランシス様と私たちに任されたのは1ヶ月後の英雄祭、騎士課の学生による試合と文官課の学生による魔法コンテストだ。



「それでは、文官課への聞き込みは頼む」

「お任せください」



にこやかに返事をするローワンと、それに呆れたようなアニーという恒例の様子を横目に生徒会室での打ち合わせは解散になった。


窓の外をピチチと飛んでいく鳥に目をとられた。



「そういえば、カレン」

「ローワン、どうしたの?」

「お茶会の準備できそう?」



そう、なんのお茶会かというと、生徒会女子会。マリアローザ様、シャーロット様、私とアニーが集まるお茶会だ。

なんとしてもマリアローザ様とシャーロット様に気に入られて、平民を第二夫人にするような貴族を紹介してもらわないといけない。



「マリアローザ様から制服で良いと」

「それは、中々豪気だね」

「それだけカレンを取り込みたいんだろう?気をつけろよ、適当なやつの第二夫人以降にさせられないようにな」



アニーの忠告にそれが目的ですなんて言えないが、ローワンはお見通しのようでニコニコしている。



「もう少し手こずらせて、価値を吊り上げてからの方が高く売れるよ」

「バカ、商売と人生一緒にすんな」



ニヤリと悪どい商人のように笑ったローワンは楽しそうに私の髪の毛をかき回した。



「さて、そんなカレンにエリオット様からのプレゼントだ」

「え?エリオット様?」

「おいおい、それはまずいんじゃないのか?」

「シャーロット様との仲を取り持ってもらった御礼らしいから、シャーロット様公認だよ?」



そう言ってローワンから差し出された髪飾りは、深いエメラルドが施された髪飾りは明らかに平民相手の物ではないが、私がつけても不自然がないような宝石が前面に出ない作りになっている。



「これまた、金のかかってそうな……」

「宝石を押さない作りって言われて職人も困ってたよ。ただ、これをお茶会につけていってもなにも着けなくても波風が立つだろう?」

「うん、シャーロット様の前に着けてはいけないね」

「ということで、フランシス様からも預かりました」

「え」



フランシス様からは赤の髪飾り。美しいリボンで作られたカチューシャに小さく宝石が施されている。



「これ、求愛の装飾具じゃないか!宝石がダイヤモンドだろ」

「だから預かってるって言ったじゃん」

「エリオット様からのよりは波風立たないけど、フランシス様はこれをつけた日にはガチで口説きにくるぞ」

「だろうねえ。そんな毎日は親愛なるアニーの胃に穴が開きそうだから、雇用主であるミラー商会からもプレゼントだよ」



一緒にクッキーを売っている従業員仲間の女性の何人かがつけていた見覚えのあるリボンを差し出された。



「さて、お好きなのをどうぞ?」



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