第25話 ヒロインはお姫様に護られる

次から次へ部屋に通される貴族たちの顔を網膜に焼き付けるように覚える。


あぁ、この人も、あの人もダメ……。


え?生徒会の面接してるのかって?それはエリオット様がやるもの。私がやるのは私の婚約者候補の選別、私を第二夫人にしてくれそうな貴族探しだ。



「どうでしたか?」

「ダメですね。カレンを見る目が冷た過ぎる」

「そうでしょうね。殿下の決定に従えない部下は不要です」



エリオット様がそう頭を抱えていたら、生徒会室のドアが開け放たれた。珍しい赤のリボン、騎士課を表すリボンに目を丸くする。シャーロット様だ。



「エリオット様、お話があってきましたわ」

「シャーロット嬢、今は……」

「わたくし、殿下の意志に唯唯諾諾と従うだけなら宰相なんて要らないと思いますわ!」



的確かつ力強いアドバイスにエリオット様が顔を引き攣らせる。理由は簡単、この声が殿下本人に聞こえているから。



「確かに、平民の声を聞くことも大切でしょう。ですが、相応の役目を持って教育を受けてきているのです。生徒会は統べる者たちの練習場所ですわ、商人や、それこそ村民には務まりません」



フランシス様を罵倒していたからおツムの悪いご令嬢かと思っていたら、シャーロット様は教会に洗脳されているだけでの貴族だ。



「発言を許すわ。正直に言いなさい。あなたたちは生徒会をやりたいの?」

「私は命令があったから従っているだけです」

「アニー!」

「この場の上位者に従っただけです」



絵のことを知っているはずなのにアニーはスパンと生徒会をやりたくないと回答した。



「ローワン・ミラー、あなたは?」

「カレンを一人で入れるわけにはいきませんから。レディをエスコートできない男からお菓子は買いたくないでしょう?」

「その心意気を買って、クッキーぐらい買ってあげるわ。後日、父親と来なさい」

「ありがとうございます」



なぜか商談を取り付けたローワンにただじゃ転ばないと感心する。



「あなたは?カレン・ステノ」

「私は……わかりません。生徒会がなにをするのかもよくわからないので、答えられないです」

「正直でよろしい。で?これを聞いて、まだ続けるおつもりですか?」



そう言い切ってシャーロット様が睨みつけたのは、犬の絵だった。

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