白いおうちを被った少年たち 

私と亡くなった兄の遠い記憶


紙で作ったましかくの白いおうちを被ってみどりの中庭を ふたりで駆けていた


両手はおうちが離れないように そっと添えて


夏の午後 まだ暑さも際立ち始めていない頃


おうちの中に顔を入れていると それが日陰になっていて


あの頃一番好きだったあそび 


お金もかからず 欲しいものなんてそんなになかった


夢の中で みどりと白の光景を見た


ふたりがしゃがんで 鉛筆を取り出し スケッチブックに描いたものを


そっと覗いてみる


ぐちゃぐちゃに 線も定まらないそれら ただ輪郭だけに力強さが見えた


じっと見ていて 私は枯葉色の目を瞠る 


これは 大人になった兄と私 


それを子供だった兄と私が描いている


出会ったこともないはずなのに


線を辿る 兄の笑った顔の絵がある


夢から覚めた


私はいつの間にか 子供のように大きな声で泣いていた


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