第12話 第三の男
「そう言えば……菰田が来るんだよな」
「菰田?」
かなめの言葉に出た聞いたことが無い名前に、誠は思わず反応していた。
「菰田君はカウラちゃんの担当でしょ?」
アメリアは苦笑いを浮かべながらカウラの表情を窺った。カウラは訳が分からないというように、ただ烏龍茶を飲み、串焼きを頬張った。
「菰田さんて……技術部の人ですか?」
あてずっぽうでそう言った誠に、三人の女上司は大きくため息をついた。
「あのなあ……うちは『組織』なんだよ。誰がうちの経費の計算してると思ってるんだ?誰がオメエの残業手当を計算してると思ってるんだ?」
かなめはあきれ果てたというようにラム酒をあおった。
「でも……事務仕事なら、アメリアさんの『運航部』でやってますよね」
誠は馬鹿にされて少し怒ったようにそう言った。
「うちはあくまで『下請け』だから。経費の計算は『管理部』の担当なのよ。そこの部長代理が菰田邦弘曹長なの。まあ……嫌な奴よ。今回の旅行もしっかり来るみたいだけど」
そう言うアメリアの表情にはあざけりの色が見て取れて、誠は少し菰田と言う先輩に同情していた。
「一応、アイツは下士官寮の副寮長だぞ。まあ……シンパを集めて珍妙なことをするばかりであまりリーダーシップとかは無いから島田よりは影が薄いがな」
かなめはそう言うと葉巻をくゆらせる。
「シンパ?」
誠はかなめの言葉が理解できずに聞き返した。
「そう。あの馬鹿はカウラちゃんの欠点である『盆地胸』に執着する馬鹿よ!私やかなめちゃんみたいに胸が大きいのは不潔なんですって!馬鹿にして!」
怒りに任せてアメリアがそう言ってビールのグラスを叩きつける。誠は何とか彼女をなだめようと、空いた彼女のグラスにビールを注いだ。
「まあ、菰田の計算は正確だし、判断も適格だ。私は所詮作られた存在だ。どう思われようが仕方がない」
「カウラちゃんがそんなだから連中が増長するのよ!それに、『ラストバタリオン』なら運航部の女子全員がそうじゃないの!」
落ち着いた様子のカウラと対照的にアメリアはかなりエキサイトしていた。
二人の人造人間の様子を眺めながら、誠はビールを飲んで酔ってしまおうと考えた。
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