第9話 アイテムビルド

 次の日。

 文明の証――衣服を身に着けた俺達は、荒野に立っていた。

 昨日、変なギザギザの葉っぱを集めてみたら服を作れた件について。

 ひと晩かけて考えてみたが、なぜそんな事が出来るのかさっぱりわからなかった。

 どゆこと??

 俺が文系だからわからないんだろうか。

 草を集めたらしゅるるーって、なってポンとパンツが出来ます。

 こんな事、理科で習った??

 あーもっと勉強しておけばよかった。

 とはいえですよ。

 あのシステムは、何もないこの荒野で生きていくには、ものすごい力になる。

 それだけは文系の俺でもかろうじてわかった。

 なので、今日は実験をしてみようと思います。

 素材になりそうなものを集めて、何か作れないか試してみるのだ。


「うらー!」


 実験助手として連れてきたうらら(着衣全年齢Ver)は、楽しそうにちょうちょを追いかけていた。

 なんて使えなそうな助手か。

 まあいいのだ。

 かわいいし。


「よし、この辺で使えそうな素材を集めるんだ!」


「うら!」


 そんなわけで、うららと素材を集めることにした。

 30分後。

 集まった素材は以下の通り。

 ・石ころ

 ・木の棒

 ・草

 ゴミばっか!!

 いや、どんなに探してもこんなもんしかないのだが。

 荒野ってヤバい。


「うらー!」


 うららは嬉しそうにでっかい茶色いカエルを捕まえてきた。

 使えそうな素材つったのに。

 助手はやっぱり使えなかった。

 まあいいのだ。

 スポブラ巨乳だし。


 果たしてこんなゴミで何かを作れるのだろうか。

 諦めながら集めてきた素材を見つめる。


『素材が集まりました。以下のものを作成可能です』

『石の斧』

『石のつるはし』

『石の槍』

『ボーラ』


 おおおお!?

 ゴミとか言ってごめんね!?

 普通に作れるらしい。

 今回は武器シリーズだろうか。

 早速なにか作ってみよう。

 どれにしようか。

 ていうか、ボーラってなんだ。

 鰡? 魚かな?

 まあ、とりあえずは槍かな。

『石の槍』を目線で選択する。

 しゅるるー。ぽん!

 石ころと木の棒がなくなって、長さ1メートルほどの槍が出現する。

 すげえ。

 木の柄に、尖った石が先端についた槍。

 木と石で出来ているのはわかるが、元の素材の長さも形もぜんぜん違う。

 30センチくらいの木の棒数本と、丸みを帯びた石ころだったのだ。

 どうやったら1メートルの柄と鋭い先端になるのか。

 相変わらず理屈はわからないが、考えても答えは出てきそうにない。

 じゃあ、考えなくてもいいか。

 とにかく、すごい。


「う、うらー」


 そんな時、うららが槍を見て目をキラキラさせていた。

 頬を上気させながら、涎を垂らしそうな勢いで口をぽかんと開けている。

 ザ・羨望の眼差しだった。


「ほしいのか?」


「う、うら!!」


 こてんこてんとうららは首を縦に振る。


「じゃあ、やろう」


「うら!? うら! うらら!!」


 槍を受け取ったうららは目を輝かせて、頭をぺこぺこと下げていた。

 ありがとう! ありがとう! みたいな事を言っているんだろうが。

 ものすごい喜びようだった。

 昨日、パンツ作ったときもこれくらい喜んでほしかった。

 下着はいらないけど、武器は喜ぶ女の子って。


「うらー」


 うららは槍を掲げて目を輝かせている。

 まあ、喜んでくれたなら良かったけど。


 とりあえず、他の武器も作ってみようかな。

 そんなわけで、素材をせっせこ集めて、しゅるるー、ポンを繰り返した。


「うーー!」


 やっと全てを、作り終えた頃。

 背後で、うららの唸り声が聞こえた。

 振り返ると、うららとうりぼーが対峙している。


「うららー」


 うりぼーに対して、石のやりを見せつけるうらら。

 その表情は、どこかドヤっていた。

 ニューウェポンのお披露目らしい。


「うら!」


 意気揚々と槍を振り下ろすうらら。

 槍はぺちこんとうりぼーの背中を叩く。


「きゅー?」


 うりぼーには全然効いていないようだ。

 うりぼーは今なんかした? みたいな顔をしていた。


「うら! うら!」


 ぺちこん、ぺちこん。

 うららは必死に槍で叩いているのだが。

 そうじゃねえだろ、と思った。

 槍って叩くんじゃなくて、突くものでは?

 なぜこん棒と同じ扱いをするのか。


「ちょっと貸してみろ」


 うららから槍を奪って、うりぼーを一突き。


「きゅ、きゅー!」


「うら!?」


 槍はあっさりとうりぼーを貫通。

 うりぼーは絶命した。


『特技:へっぽこ槍使いを習得しました』


 なんか習得した。

 へっぽこってなんだよ!?


「うらら……」


 うららは俺を見て、目をキラキラさせている。

 頬を上気させて、目をとろんとさせながら。

 とりあえず、どちゃくそ可愛かった。

 別の槍を使いたくなってしまうのでやめて欲しい。

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