第7話 文明のかほり

 朝食を終えた俺達は、丘の麓の草むらにやってきていた。

 服を作ろうと思い立ったのはいいものの。

 じゃあジーパンと白シャツでも作るか、なんて事が無理なのはわかる。

 使える素材なんて、うりぼーの毛皮か、草くらいしか思いつかなかった。


「うらー!」


 ついてきたうららはこん棒を装備して、ご満悦だった。

 丸出しでこん棒を持った女。

 ザ・原始人である。

 原始人と言えば、葉っぱの服を着ているイメージだった。

 毛皮の服も作れるかもしれないが、この辺は暑いので却下である。

 あとは武田なんとかさんの貝殻のビキニしか思いつかない。

 貝殻がどこにあるのかはわからないが、あれはダメだ。

 キングエレファントが収まらないので。

 今回はうららのエッチすぎる体を隠すのを目的とする。

 貝殻ビキニなんて着させた日にゃ、俺のキングエレファントがビーストで獣王痛恨撃を放ってしまう。

 どうしよう。

 何を言っているのかさっぱりわからない。


 とりあえず草むらに生えていた草を適当にちぎってみる。

 長さ10センチほどの草だった。

 これを使ってどうしろと??

 俺は途方に暮れた。

 たくさん集めて、束ねればハワイアンなお姉さんの藁スカートみたいなのが出来るかもしれない。

 長さ10センチの藁スカート。

 ぱおーん!!

 キングエレファントは普通に荒ぶっていた。

 これはいけない。

 うーん。


「なあ、もっとでっかい草ないかな?」


「うらー?」


 ダメ元でうららに聞いてみる。

 うららは蟻の巣に草を入れて遊んでいた。

 飽きてる感すげえな。

 こいつの貞操を守るために草むしってたのに。

 とりあえずむしった草を見せて、もっとでかいのと、両手を広げて表現してみた。

 通じる気が全くしないが。


「うらら!」


 うららは何かを思いついたように、俺の手を引く。

 通じたのかよ。

 何事も諦めずにやってみることが肝心だと学んだ。



 うららに連れられてやってきたのは少し離れた草むらだった。

 先程の草むらより植生が深い。


「うらー!」


 うららが指を指したのは、大きな葉をつけた雑草? だった。

 おお。

 ぎざぎざした葉っぱが花びらのように生えた植物。

 葉っぱが重すぎるのか、茎はでろんと曲がって地面に付きそうだった。

 葉っぱの大きさは、俺の手のひらより大きい。

 これなら隠せるかもしれない。

 まあ、私のエレファントはこんなもんじゃ隠せませんけどね(ドヤ)。

 ぎざぎざ葉っぱを収穫していく。

 これをたくさんつなぎとめて、うららのスカートと乳バンドを作るのだ。

 どうやって繋ぎ止めるのかは不明だが。

 紐もないし。

 …………。

 あれ、詰んだ気がする。

 ご飯粒とかで乳に葉っぱを貼り付ければいいんだろうか。

 なんというかオーガニック。

 ご飯粒すらないけど。

 そんな時だった。


『素材が集まりました。以下のものを作成可能です』

『麻のズボン』

『麻の手袋』

『麻の服』

『麻の……』


 そんな文字列が視界にずらずらと表示される。

 なんだこれ。

 作成可能ってなんだ。

 なんか麻シリーズの服が作れるとか言っている。

 どうやって作るんだよっていう話である。

 ずらずらと並ぶ麻シリーズの服一覧。

 そんな中で見つけた。

『麻のスカート』

 おお。

 それ作りたい。

 その時、麻のスカートと書かれた文字列がピコンと点滅する。

 ぎゅるるるー!

 集めた葉っぱがものすごい勢いで勝手に集まり始めた。

 一点に収束。

 そして、ぽんっと。

 間抜けな音とともに、パサッと地面に何かが落ちた。

 拾ってみて、びっくりした。

 スカートだった。

 白いスカート。

 ミニと言うほどではないが、結構短い。

 えええええ!?

 なにこれ便利!!!

 理屈とか仕組みとか全然わからないけど、便利!!!


「うらら! これ穿いてみ?」


 とりあえずうららを呼ぶ。


「うらー?」


 うららはスカートを見て、首をこてんと傾けていた。

 初めて見るのだろう。

 穿けと言われても無理な話か。


「足をここに通して」


 そんなわけで穿かせてあげることにいた。

 うららの前でしゃがんでスカートを穿かせていく。

 スカートにはジッパーなんてものはついてなく、ゴムも付いていない。

 下から穿かせるしかないのだが、でかい尻で引っかかった。


「う、うらー!?」


 なんてけしからん尻だ。

 ムチムチじゃねえか。

 しかもすべすべ。

 はあはあ。

 俺は不可抗力でうららの尻を揉みまくってスカートを穿かせた。

 うららの尻がでかいおかげで、スカートが落ちてくることはなかった。


「うらら!」


 スカートを気に入ったのか、うららは嬉しそうにくるくる回っている。

 ひらひらと舞い上がるスカートが面白いらしい。

 でも、これはいけない。

 スカートが舞い上がったら、全て見えてしまっているので。

 丸出しの頃よりエロさが跳ね上がっていた。

 作らねば、パンツを。

 確かさっきの麻シリーズ一覧にあった。

 今は視界の文字列は消えていた。

 収穫した葉っぱが全てうららのスカートになってしまったからだろうか。

 とりあえず、また葉っぱをちぎる作業だろうか。

 ぶちぶちとギザギザの葉っぱを収穫していった。

 すると。


『素材が集まりました。以下のものを作成可能です』


 おお、出た。

 再びずらずらーと並ぶ麻シリーズの服。

 その中にあった。

『麻のパンツ(女性用)』

 その文字列を見つめていたら、再び点滅。

 きっとこれで選んだことになるんだろう。

 再び収縮していく葉っぱたち。

 そして、ぽんっと。

 地面に白い三角形の布切れが落ちた。

 拾って見ると、その滑らかな肌触りに驚く。

 絹ってほどじゃないが、下着でも十分に使用可能な滑らかさだった。

 しかも伸縮する。

 何コレすっごい!!!

 これっすごおおおいい!!

 アダルトなビデオに出演中の女優さんみたいなセリフを思いながら、うららを見つめる。


「これを穿きなさい?」


 努めて、紳士に。

 ねっちゃあっと言ってみた。


「うらー?」


 しかし、残念な事にうららは首をかしげる。

 じゃあ仕方ない!!!

 おじさんが穿かせてあげよう。

 大義名分を得た中年は、いそいそとうららの足元にしゃがむのだった。

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