第3話


「将来かぁ~。奈々ちゃんは将来どうしたいの?」


「私は好きな人とずっと一緒にいれたらいいなって思ってるよ。具体的に何したいとかはないけど、私は寂しがりだから一人は嫌だし、できたらずっと一緒にいてお互いを大切に思える関係でずっといれたらなって」


「や~……奈々ちゃん可愛い!好き!」


乙女な回答に私は和んでしまった。私は恋人に対して寂しいと思わないし人としては良いけど気を使ってつまんないやつといるのは無理だから一人でいいと思ってたけどこういう考えの人もいるからなぁ。ていうかこういう考えの人の方が恋愛も結婚も上手く行くと思う。向き不向きがあるから。



「でも、粗大ゴミと付き合ってたんだよ私?」


奈々ちゃんは笑って言ってきたけど私はこういう幸せをちゃんと考えて求める女子が好きだった。

そういうのを考えて頑張ってる女子は辛くてもめげずに頑張るから偉いのだ。


「それでも頑張って前向いて考えてんじゃん。その姿勢は本当偉いと思うよ私。それに粗大ゴミなら私も引いたから気にすんな?もう張り切って次行こうぜ?粗大ゴミはいつか死ぬから気にしない。私達は前だけ向いてたらいいの」


「……ありがとう朝海ちゃん……」


「え?!奈々ちゃん?!なに、どうしたの?!」


奈々ちゃんは突然また泣き出した。笑ってたのにどうして?私はどこで間違えた?困惑してとりあえず背中を擦ってたら奈々ちゃんは涙をティッシュで拭きながら言った。


「なんかね、……いっつもね、付き合ってた時否定されるような事ばっかり言われてたから……うれしくて……」


「あ、嬉し泣きだったの?だったら良いけどそんな泣かないの。奈々ちゃん大好きだから泣かないで?」


「うん……。ありがとうあさみちゃん……。うっう……今日朝海ちゃんと話せて良かった。話聞いてくれてありがとう……」


さっきと同じくらい号泣しながら喜ばれても嬉しいけどそわそわしちゃう。粗大ゴミと別れた直後みたいだから泣きやすい時期なのは分かるけど奈々ちゃんみたいな美人に泣かれると悪い事した気分だよ。この子は美人の中にいても目を引く美人だもん。私はとにかく慰めた。


「私も今日話せて良かったよ奈々ちゃん。てか、いつでも話なんか聞いてあげるから本当に泣き止んで?またシャンパン入れようか?それとも私の乳飲む?どっちもただだよ?」


「……どっちもいらない……」


「え、また?私皆に嫌われてない?嘘でしょ…?え、奈々ちゃん私の事嫌い?」


「……すきだよ…」


「あ、うん。ありがとう。私も大好き。よかった~」


冗談を普通にまた断られたけど嫌われてなくて安心した。乳に関してはだいたい断られるけど好きでいてくれるならいいの。それより泣き止みそうにないから私は奈々ちゃんを必死に慰めてまた奈々ちゃんといろいろ話して楽しんだ。

奈々ちゃんは粗大ゴミを引いてしまう不幸体質なだけでお酒強いし普通に面白い子だった。でも、途中で何度か泣いててその度に困っちゃったけど人生そういう時もある。


そうして店が閉店を迎えた朝の五時過ぎに会計をして奈々ちゃんの分を全部奢ってあげた。奈々ちゃんは悪いしいいからって言ってたけど何か人生大変そうだったし、奈々ちゃんのこれからの景気祝いだからいいのって無理矢理払った。これで少しでもいい風が吹いてくれるのを願うばかりだ。奈々ちゃんは幸せになってほしい切実に。

それから帰る準備をしながら私は奈々ちゃんに話しかけた。


「ねぇ、奈々ちゃん?連作先教えて?今度また飲もうよ?」


「うん!私もまた飲みたい。ちょっと待ってね」


嬉しそうに携帯をいじり出した奈々ちゃんに嬉しくなる。ずっと話したかったから奈々ちゃんと友達になれて嬉しい。飲む日絶対連絡しよ。うきうきしながら連絡先を交換したら奈々ちゃんに改めてお礼を言われた。


「ねぇ、朝海ちゃん。今日は本当にありがとうね?ヴーヴまで入れてくれて、しかも私の分も奢ってくれたし」


「え、もう全然いいよ?奈々ちゃん元気になってくれたから充分だよ。それに私酒飲むくらいしかやる事ないから大丈夫。友達いないし」


趣味も特技ももうないと言うか、いろいろやり過ぎて失くなってしまったので金の使い道は少ない。私は笑顔で言った。そんな事より次である。


「それより奈々ちゃん今度美味しいもんでも食い行かね?エスニックの美味しい店発見したんだけど奈々ちゃんエスニック好きみたいだしどうかな?」


「え?行きたい!どこにあるの?」


目を輝かせた奈々ちゃんに良かったと安心する。

私は詳しく説明した。


「えっとね、××駅の近く。ちょっと歩くけどエビの揚げパン?だったかな?うまくて目が覚めるってよ」


「えー!美味しそう!××駅か…。いいねそれ!早く行きたい。朝海ちゃん絶対行こうね?」


「うんうん!絶対行こう!」


さっそく取り付けられた約束に嬉しくなる。

私は基本酒飲む女が大好きなのでとっても嬉しかった。

奈々ちゃん面白いし可愛いし楽しみだなぁ。

私は奈々ちゃんと少し話して別れるとバケツを起こして一緒に帰った。そして帰って寝て起きて風呂から出るとバケツは具合が悪そうだったけどちゃんと家に帰れたと連絡が来ていたのでほっとした。

あいつは女なのにたまに昼過ぎくらいまで電車乗って吐いたりしているから安心した。


それと奈々ちゃんからなんか絵文字いっぱいの連絡が来て微笑ましかった。あの子可愛いしいい子だし、キャバクラ行く男の気持ちが分かった気がする。今日のお礼と帰りに言ったやついつにする?って内容に私は急いで返信して二日酔いのせいでずっと横になって休みを終了した。



そして翌日。とっても嫌な仕事である。起きた瞬間から行きたくないと思って少し唸っていろいろやって出勤する。私はいつも三十分前に出勤して化粧をしたり朝ご飯を食べている。今日はデスクで自分で作ったでかいおにぎりを食いながら今日の仕事に嫌気がさしていたら私の隣に先輩のひいちゃんが座った。


「朝海おはよう」


「あ、ひいちゃんおはよう。ねぇ!聞いて?!私美女と友達になりました~。いいでしょ~?」


「……よかったね」


「え、反応薄っ。セクブラでね、前から話したいなって思ってた奈々ちゃんって子なんだけど、粗大ゴミ引いて泣いててさー、まじ可哀想だった」


ひいちゃんは入社してからずっとお世話になっている仲がいいドライな一個上の先輩である。茶髪ロングのクール美人なんだけどひいちゃんは兎に角ドライ真顔。普通に仲良くなるには相手のコミュニケーション能力が試されそうな人である。でも、いい人だし昔は合コンとかクラブとかも行った仲である。


「浮気?」


さっそく当ててきたひいちゃんに私は頷いた。


「そうそう。しかも二回も。そんで最後には自己保身のために相手にせいにする手法ですよ」


「は?死ねよ。本当クズしかいねぇな日本」


淡々と言うひいちゃんはいつも直球の刺さる言葉を言ってくる。ひいちゃん今日も冴えてるなと思いながら私は頷いた。


「だよねぇ。しかもそいつ女でね、元カノと浮気だって。同じ女として恥ずかしいよね。女を代表して奈々ちゃんに謝っといた私」


「偉い朝海。……ていうかさ、元カレとかと元サヤに戻るやつって見てきて思ったけど人間的に難あるやつ多すぎ。ヤれそうだからとかヤる相手いなくて寂しいからとかじゃないの?別れて正解だねそいつは」


ひいちゃんは真顔で鞄からサラダを出して食べながら言った。ひいちゃんは美人でモテるけどズバズバこういう事を言うしこの人の言う事はほぼあっている。

つまりいろいろあったって事ですねひいちゃんは。


「分かるー。普通に無理だから別れたのにより戻すって意味不明だもんね。てかさぁ、いい年して寂しいからってすがってくる感じが気色悪いしねぇ~」


「それな。それよりその奈々ちゃんは女しか無理なの?」


「あ、奈々ちゃん?奈々ちゃんはそうなんじゃないかな?自分で言ってたけどくっそ可愛いよ?酒強いショートカットの美人」


「ふーん。その子はいいけど……でも、男もそんないいやついねぇな」


「そうだけどひいちゃんの彼氏めっちゃいい人じゃん。まだ結婚しないの?」


ひいちゃんは年上のすんごい優しい彼氏と付き合ってそれなりに経った。ひいちゃんをよく迎えに来るんだけど普通にイケメンでちゃんとした会社に勤めてて話を聞いててもいい人だ。でも、ひいちゃんはクセが強い。美人だけど。


「んー、結婚したいとは言われたけど考えてる」


「え?!なんで?!」


初耳な情報に声が大きくなってもひいちゃんは真顔でサラダを食っていた。


「一緒に暮らしたくないから。いつも一緒にいたくないしヤるの気使うからそんなにしたくない。好きだけど」


「え~……。分からなくはないけどさすがひいちゃん。それ言ったの?」


「言ってない。でも言わないとだからそろそろ言うかも。また泣かれたらどうしよう…」


ひいちゃんはよく彼氏から何か言われて彼氏を打ちのめすくらいの球を投げ込む。だからよく男を泣かしているのだ。まぁ、泣いちゃう気持ちも分かるけどひいちゃんってこういう人だから接してて分からなかった自分もバカだと思うよ?だって、この人自分持ってるし全然靡かないし。

だからひいちゃんを好きなやつって絶対ドMだと思うけどひいちゃんヤってる時とか真顔そうだよね……分かんないけど。

いつもめんどくさいとか疲れたって言ってるし。

相当な覚悟ないとメンタルやられるぞ。美人でいい人だけど。


「どうせ泣かないでくれるって真顔で言うんでしょ?てか、それを受け止めてくれる彼氏って……中々見つからんよひいちゃん」


「うん。分かってるけど私は兎に角誰かと一緒に暮らしたくない。結婚はしたいけど一緒に住むのは疲れるから嫌。朝海ならまだいいけど」


「え?私?やだ~、ひいちゃん私の事そんなに好きだったんだね?私ってやっぱり魅力的だし笑顔眩しく感じるくらい可愛いし、ひいちゃんがそう思っても……て、嘘です。冗談です、ごめんなさい」


真顔で見つめられて耐えられなくて謝ってしまった。綺麗だけど冗談言ってもこうとか彼氏となに話してるんだろう?まぁ、こういうとこも好きだし素敵だけどな。


「……朝海って面白いね。なんか元気出たわ」


さっきまで真顔だったのにひいちゃんは突然にっこり笑った。ひいちゃんは真顔率高いけど笑うには笑うのだ。


「ひいちゃん今日も笑うと可愛い…。噛んで食べていい?顔」


「は?殴るぞ?」


「え?怖い…。殴るぞって…そんなん成人した女性が普通言わないよ?そんな気に触った?とりあえず謝るけど」


ひいちゃんは真顔で今みたいに冗談を言う。普通に仲良くなかったら驚くけど私はもう笑っていた。


「朝海仕事したくない」


「え?また無視?ねぇ、また?」


ひいちゃんに話を流されて私達は適当に話をしながら適当に仕事を始めた。

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