貴族列車騒動
20、貴族列車での一幕
事件はまだ始まったばかりである。
現在、異世界探偵はコタローに連れられてとある列車に乗っていた。そこには数多くの探偵と王国兵が集められていた。
どこにそれほどの財力があるのか、その理由としては彼らを呼んだ者が"貴族"であったからだ。
今日は彼らにとって何か
『記念すべき今日、あなた方は終わりを迎える。
これまで多くのものを奪った代償、そして空想の上に作り上げた虚栄を私は許しはしない。
だからこそ、今日ここであなた方には死んでもらう。
無名作家より』
彼女の目的はこの列車で何かをすることなのだろうか?
だとすれば、彼女は一体何をしようとしているのだろうか?
異世界探偵は列車内に怪しい人物や物がないかを確認するため一人徘徊するも、どこもかしこも人だらけ、これでは誰が怪しい行動をしようとも分かりえない。
渋い表情をする異世界探偵へ、一人の男が話しかける。
「お久しぶりですね。異世界探偵さん」
異世界探偵は振り向いた。
そこにはかつて事件で遭遇した男が立っていた。腰には見覚えのある刀を差している。
「辻村さん、あなたも呼ばれていたのですね?」
辻村霧太刀ーー元王国兵であり、かつてホテルで起きた殺人事件にて出会った人物。
「ああ、王国兵を辞めた後、俺は護衛の仕事をするようになったからな。それで貴族を護衛しろと依頼が来た」
「誰からの依頼だったんですか?」
「王国兵を統括している将軍だ。かつての上司である将軍の命により、俺はこの列車へと来させられたわけだが、何が起こるか分からないんだよな。特にこれといった情報は教えてもらってないし、ただ事件が起きるとしか」
何も聞かされていないわけではない、この事件では何が起こるか分からない、それが正しい答えなのだろう。
無名作家、彼女が企んでいることは、未だ誰も分かってはいない。
「異世界探偵、君は誰から依頼された?」
「俺は探偵仲間から招待されてな。その探偵仲間は誰から依頼されたか分からないが、かなり大きな事件が起きることはまあ人の多さを見れば分かる」
「ああ。だがさすがに人が多すぎて犯行を行いやすくなってる気がするんだよな」
ここへ召集されたのは五十名ほど。
それほどの数の中に潜むことは文明があまり発展していない世界では容易であった。
二人が話しているのへ割り込むように、胸には王国兵の証であるバッジをつけた男が辻村へと歩み寄る。
「辻村さん、ちょっと来ていただけますか?」
「あ、ああ。分かった。そういうことだ、また後でな。異世界探偵」
男へ連れられ辻村は去っていく。
残った異世界探偵は、列車の内装について調べようと前方の列車へと進んでいく。
だが次開けようとした前方車両への扉を開けようとした時、鎧を着た王国兵姿の二人の男が異世界探偵へ槍を向けた。その刃は偽物ではなく、明らかに本物であった。
「ここから先は貴族様だけが入れる車両になっております。ご遠慮願えますか」
止められている異世界探偵の姿を見るや、一人の青年が後ろから歩いてきた。
「おいおい、ちょっと来るであります」
腕を引っ張られ、王国兵が警備をしていた車両から追い出された異世界探偵は、その正体を掴むために振り返った。腕を引っ張っていたのは、一度列車の事件をともに解いた鉄道探偵であった。
「異世界探偵、一つ言っておくが、この列車で妙な真似をすれば最悪死ぬ。だからあまり目立つ行動はするであります。特に、貴族がいる車両に入ろうだなんて肝が据わりすぎているでありますね」
「だが、この車両がどんな風になっているのか分からない限り、危険物とかがあったりしても見つけられないじゃないか」
「安心するであります。貴族が乗っている車両だけは入念にチェックされている。それで何かあるというのは考えられないであります」
「だが……」
「じゃあ俺がこの列車の内装を教えるであります」
この列車は八両編成、一両目と二両目は貴族専用の車両であり、我々招待されただけの一般人は入れない。三両目は貴族を護衛する王国兵がいる。
四両目は料理をいただけるレストランがあり、五両目以降には招待された探偵やら王国兵やらが乗っている。
「お前も招待されたのか?」
「ああ、事務所に依頼が来ていたものでな。しかし無名作家などという知らない人物からでありますがな」
「無名作家か、またか」
何度も何度も無名作家という名を聞き、彼女の狙いが益々見えなくなっていた。
「異世界探偵、君にとっておきの情報を教えてあげるであります」
「とっておき?」
「ああ。この列車が向かっている場所、そこは地図には記載されていないはずの場所さ。なぜか地図から姿を消している場所、この意味が分かるか?」
「何か裏がありそうだな」
「そう、正解。俺はこの事件の裏で無名作家が関わっていると見ている。それも五年前に起きた鉄道初型が事故に遭った事件と無名作家は関わりがあると見ている」
「その話、詳しく聞かせてくれ」
食い入るように異世界探偵は鉄道探偵へと告げた。
鉄道探偵はしばらく考え、そして言った。
「俺の知る限りだが、その事件について話そう。"彼女が怠惰となったその日"のことを」
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