第588話 アースドラゴン討伐戦
上条は『マナバリア』を発動し、D粒子マナコアを腰に巻く。これでストーンブレスを防げるだろう。ケリーたちがアースドラゴンの右脇腹を狙って、『ホーリーキャノン』を発動し聖光グレネードを放つのが見えた。
アースドラゴンは聖光グレネードに気付いたが、近距離からの攻撃だったので避けられなかったようだ。命中した聖光グレネードは、爆発して金色の聖光を発するD粒子をアースドラゴンの硬い表皮に叩き付けた。
残念ながら、ほとんどダメージを与えられなかった。だが、痛かったようで、アースドラゴンが吠えた。そして、ケリーたちへ敵意を向ける。
上条は『フラッシュムーブ』を使って、アースドラゴンの斜め上に移動する。ちょうどアースドラゴンの肩の十五メートルほど上空になる。
落下しながら『ホーリークレセント』を発動し、アースドラゴンの首を目掛けて聖光分解エッジを放つ。そして、命中する前にもう一度『フラッシュムーブ』を使って離れた。
アースドラゴンは聖光分解エッジを避けようとして全身を捻った。そのせいで狙いが外れ、聖光分解エッジがアースドラゴンの肩に命中する。聖光分解エッジの<聖光>の特性が<邪神の加護>を打ち破り、<分子分解>の特性が表皮や筋肉を分解しながら食い込んで、肩の骨まで達した。
アースドラゴンの防御力は、氷神ドラゴンより弱い。聖光分解エッジは肩の骨を半分くらいまで切断して止まったようだ。
ダメージを負ったアースドラゴンが咆哮を放ち、上条に向かって跳躍して距離を縮めるとストーンブレスを吐き出した。上条は慌てて魔力バリアを展開する。
魔力が圧縮されて石のように固くなった魔力圧縮玉が、
ラドフォードが心配そうな顔を上条に向ける。
「上条、大丈夫か?」
「大丈夫だ」
そう言った瞬間、尻尾が飛んで来た。上条は『フラッシュムーブ』を発動して逃げた。空振りした尻尾が地面に叩き付けられ、地面が揺れて轟音が響き渡り盛大な土煙が上がる。
それを見ていたケリーが、
「あれは『カタパルト』と似ているけど、ずっと凄い。絶対覚えなくちゃ」
と目をキラキラさせて呟いた。
ディクソンは上条とアースドラゴンの攻防を見ていた。そして、上条が一人で倒してしまうのではないかと不安になる。
「三人は、足を狙え!」
ディクソンが大声で指示を伝えた。それを聞いた上条は、打ち合わせの時に話し合った戦術パターンの一つを実行するつもりなのだ、と思った。
それは足を狙って動けなくなったところに、『ブレーキングイービル』を撃ち込むというものだ。単純な作戦だが、妥当なものなので従う事にする。
上条はアースドラゴンに向かって走り出した。ケリーたちの方を見ると同じように、アースドラゴンへ向かって走っている。
ケリーとラドフォードが『ホーリーキャノン』を発動し、聖光グレネードをアースドラゴンの足元に向かって放つ。アースドラゴンは聖光グレネードを避けるために真上に跳躍した。
そのせいで聖光グレネードは空振りに終わるが、上条がアースドラゴンの着地した瞬間を狙って『ホーリークレセント』を発動し、聖光分解エッジを放っていた。
聖光分解エッジが巨大な足を切り裂き、アースドラゴンは痛みで吠えながら倒れる。
その瞬間を待っていたディクソンが『ブレーキングイービル』を発動し、破邪撃滅弾を撃ち出した。頭に向かって飛ぶ破邪撃滅弾に気付いたアースドラゴンが、上半身だけ動かして避けようとした。
そのせいで狙った頭ではなく、巨体の背中に命中。強烈なエックス線と破邪光がアースドラゴンの背中をボロボロにする。細胞が
だが、仕留めてはいなかった。ディクソンが確実に仕留めるためにアースドラゴンへ近付く。その時、アースドラゴンの口が開いて、ストーンブレスを吐き出そうとする。
それに気付いたディクソンが驚いたような顔をして、身体が固まる。上条も気付いて『ホーリークレセント』を発動し、聖光分解エッジを放った。
ストーンブレスが少しだけ吐き出されディクソンに届く前に聖光分解エッジが命中して、アースドラゴンの首が刎ね飛んだ。
その結果、ストーンブレスは形を失い、魔力の暴風となってディクソンを吹き飛ばす。
「あっ」
ディクソンが空高く舞い上がり地面に叩き付けられた。
「ディクソン!」
それを目にしたラドフォードが駆け付ける。ディクソンは口から血を吐き倒れていた。抱き起こして中級治癒魔法薬を飲ませようとしたが、自分で飲み込む力もないようだ。
ラドフォードは注射器を取り出して、中級治癒魔法薬を吸い込んで尻に注射した。
「へえー、そういう方法も有るんだな」
上条が言うと、ラドフォードが苦笑いする。
「口移しで飲ませるという方法もあるが、以前に一度口移しで飲ませようとしたら、気絶していた男が目を覚まして、殴られた事がある」
ラドフォードの顔を見て、自分でも殴るだろうと上条は思った。苦しそうにしていたディクソンの呼吸が楽になったようだ。
「大丈夫そうだな。しかし、ディクソンは何で避けようとしなかったんだ?」
ラドフォードが目を細めて、ディクソンを見る。
「こいつは魔法レベルだけ高くて、咄嗟の判断力が足りないんだ。遠距離攻撃が得意な攻撃魔法使いには、偶に居るんだよ」
それを聞いた上条が納得して頷いた。
「それじゃあ、ドロップ品を探そう」
上条とケリーはドロップ品を探し始める。まず魔石が回収された。アースドラゴンの魔石は、元々白い魔石なのだが、それは白に紫が混じってまだら模様になっていた。
「ほう、邪神眷属の魔石は、こうなるのか?」
邪神眷属になると、魔石は紫になるのだろう。ただ邪神眷属だった時間によって、完全な紫になったり、まだら模様になったりするらしい。
ケリーが槍を発見した。ケリーは分析魔法の才能もあり、『アイテム・アナライズ』で調べると『光の槍:シャインスピア』と分かった。邪神眷属にも有効そうな槍である。
ドロップ品を探していた上条は、剣を発見した。ケリーに調べてもらうと、『神剣グラム』だと分かった。
「ほう、グリム先生が持っている剣と同じか」
上条はひと目見て気に入った。アースドラゴンを仕留めた者の特権として、この神剣グラムを自分のものにする事にした。
ちなみに、シャインスピアを選ばなかった理由は、持っていると邪神眷属退治を依頼されそうだからだ。
最後に様々な宝石が入った袋が見付かった。これだけで数億円の価値が有るだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます