第462話 才能の実と限界突破の実
オリエンスを倒した場所で魔石を回収し、次にソーサリーイヤーのようなものを発見した。
「これだけか?」
俺が周囲を見回した時、為五郎が指輪を持ってきた。『マジックストーン』を発動してみたが、他には無いようだ。
「まずは指輪から調べてみよう」
鑑定モノクルを取り出して調べると、『鈍足の指輪』と表示された。
「こ、これは正真正銘、呪いの指輪だ」
鈍足……のろい……呪いの指輪というダジャレが浮かんだ。
『ダンジョンが考えたジョークでしょうか?』
「いや、ダンジョンがダジャレのようなものを考えるとは、思えないから偶然だろう。気を取り直して、ソーサリーイヤーを調べてみよう」
今度は『悪魔の耳』と表示された。『悪魔の眼』と同じく高性能なソーサリーイヤーらしい。
「これはエルモア用として使う?」
『はい、使わせてもらいます』
メティスは新しいエルモアのボディについてのアイデアが固まり始めているらしい。どんなボディになるか楽しみだ。
次は宝箱である。俺たちは宝箱に罠が仕掛けられていないかチェックしてから、蓋を開けた。予想していた通り『限界突破の実』が二個入っていた。
『誰に与えますか?』
「才能の限界まで、魔法レベルを上げているのは四人居る」
鉄心・カリナ・天音・シュンの四人である。この中でシュンは決定だろう。C級なのに魔装魔法と生活魔法の才能が『D』というのでは厳しいはずだ。
もう一人は最近魔法レベルが『15』になったばかりの天音に決めた。鉄心とカリナは来年まで待ってもらおう。
『『才能の実』や『限界突破の実』には、消費期限が有るようですから、一度地上に戻りましょう』
メティスに言われて、地上に戻る事にした。
地上に戻った俺は、冒険者ギルドの野崎支部長に五層と十層の中ボスを倒した事を報告する。
「やはりグリム先生が、ツリードラゴンを倒す事になったんですか。転送ゲートが使えるのですから、当然ですね」
俺が転送ゲートキーを手に入れた事を知っている支部長は、予想していたようだ。
「樹海ダンジョンは、他にも良いドロップ品を落とす魔物も居るし、未調査のエリアも多いから、潜って損にはならないはずです」
「そうですが、『才能の実』は多くの冒険者が狙っていましたからね」
取り敢えず報告を終えた俺は、渋紙市に戻って由香里・天音・シュンの三人を呼んだ。
あるダンジョンで『才能の実』と『限界突破の実』を手に入れた事を話した。
「我々三人を呼んだという事は、その実を譲るという事ですか?」
「そうだ」
千佳と由香里が『限界突破の実』を一千万円で購入したという実例が有るので、今回も購入すると言い出した。なので、売る事にした。
『限界突破の実』を食べたシュンと天音は、体温が上がり苦しそうにしていたが、五分ほどで平熱に戻る。これでシュンが『D+』、天音が『C+』になったはずだ。
『才能の実』を食べた由香里は、高熱を発し十五分ほど苦しんだが、副作用のようなものはそれだけだった。
後でアリサに調べてもらうと、ちゃんと生命魔法の才能が『C』から『B』に変わった事が確認できた。それを確認してから、俺は樹海ダンジョンへ向かう。
樹海ダンジョンへ行く前に、支部長から攻略状況を聞こうと思い冒険者ギルドへ寄った。
「グリム先生、良いところに」
野崎支部長が俺の顔を見ると声を上げた。
「何かあったんですか?」
「昨年、グリム先生が作動させた罠を、マフダルさんが作動させてしまったようなのです」
マフダルが消えるのを目撃した冒険者が居るらしい。マフダルというとA級三十六位の攻撃魔法使いである。俺より上位の冒険者なら、心配する事はないと思うのだが、何か有るのだろうか?
「A級三十六位なのですから、自力で戻って来ると思いますけど」
支部長が溜息を漏らす。
「マフダルさんは、転送ゲートキーを落としたようなのです」
マフダルが消えるのを目撃した冒険者の話では、その時、マフダルがコインを宝箱の中に落としたという。転送ゲートキーがないと一ヶ月で戻って来るのは、難しいかもしれない。
「マフダルさんの救出をお願いできませんか?」
「人命に関わる事なので、お引き受けします。でも、あの宝箱の罠は冒険者ギルドでも、知らせていたのではないんですか?」
「英語で説明したのですが、チェコ人のマフダルさんには上手く伝わらなかったようです」
冒険者ギルドには、チェコ語を喋れる者が居なかったのだ。冒険者の世界では、国際的な共通語が英語という事になっているので、ある程度理解できると思っていたらしい。
言語に関しては日本人の判断基準は厳しいが、外国人の中にはちょっと単語を知っていると、その言語を喋れると答える人たちが居る。マフダルも英語を喋れると言っていたらしいのだ。
俺は樹海ダンジョンに行った。一層の転送ルームへ行って、十層へ移動する。俺は十一層へ下りる階段のところに、冒険者ギルドが用意した標識を立てた。その標識に書かれているのは、十層の中ボス部屋で待つように指示した文章をチェコ語に翻訳したものだ。
標識を立ててから、まず十層の山岳エリアを探す事にした。空から探すのが効率的だと考えた俺は、戦闘ウィングを出して乗り込んだ。
ここは山岳地帯なので、低空飛行でゆっくりと探さないと見落とす危険がある。一日掛けて十層を探したが、見付からなかった。九層へ上がる階段にも標識を立てると十層の中ボス部屋に戻り、マフダルの姿を確認したが誰も居ない。
「今日は、ここで一泊しよう」
『簡単に見付かるものではないですね』
「上級ダンジョンは、一つ一つの階層が広いからな。特に山岳エリアだと見付け難い」
『探している時に、洞穴や地下に居た場合だと、見逃す事もありますから、諦めずに何度も探す必要があるでしょう』
「そうだな」
俺は十一層から十五層へ向かって捜索範囲を広げた。だが、マフダルは見付からず、もう一度転送ゲートで十層へ戻って、十一層の砂漠エリアから探す事にする。
「そろそろ、食料や水が無くなる頃じゃないか?」
『そうですね。早く見付けないと』
戦闘ウィングで砂漠の上空を飛んでいる時、爆炎が上がった。俺は爆炎に向かってスピードを上げる。一人の冒険者がキラーオストリッチの群れと戦っていた。
ただ使う魔法を間違えている。着弾すると大きく爆発し敵を吹き飛ばす魔法を使っていたのだ。そのせいでキラーオストリッチの集団が『アッレーッ!』と一斉に叫びながら吹き飛んでいく。
その声を聞いた別のキラーオストリッチの群れが駆け寄ってきた。キラーオストリッチは見た目より頑丈なので、吹き飛ばすより斬り裂いたり突き刺したりする魔法が正解なのだ。
『どうやって助けましょうか?』
「強力な魔法を使うと、巻き添えでマフダルさんにも、ダメージを与えそうだからな。ホバービークルで近付いて助けよう」
俺は少し離れたところに着地して、ホバービークルを取り出した。エルモアに操縦させて、俺はマフダルを観察する。ここまで来るのに魔力の消耗が大きかったようで、へろへろになっている。
ホバービークルがキラーオストリッチを『ぶちかましボタン』で撥ね飛ばしながら近付く。ホバービークルに気付いて、マフダルが驚いた顔をする。
「乗れ!」
俺の声でマフダルが走り出し、ホバービークルにしがみ付いた。俺はマフダルの鎧を掴んでホバービークルに引き摺り上げる。
その瞬間、キラーオストリッチが襲い掛かってきた。俺は連続で『ガイディドブリット』を発動し、D粒子誘導弾でキラーオストリッチの頭を攻撃した。
次々にキラーオストリッチを撃退し、その包囲網を脱出する。
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