第461話 オリエンスの生首
転送ルームに戻った俺は、メティスと一緒にオリエンスとどう戦うかを考えた。
『あの悪魔は、火炎魔法を得意とするようですので、『マグネティックバリア』は必ず備えておく必要があります』
「そうだな。新しい防御魔法が完成していれば、良かったのだけど」
新しい防御魔法は開発中だった。少しだけ理解した空間構造の知識を使った魔法なら、悪魔の火炎魔法もシャットアウトできたのだ。残念だが、仕方ない。
『魔法もそうですが、邪神チィトカアを倒した時に手に入れた魔法無効の布で、魔法防御用の装備が作れたら、良かったんですが』
魔法無効の布を使った装備を作ろうと思ったのだが、この布の効果を発揮させるには何かが必要らしいのだ。最初は魔力を試してみたが、違ったようである。
なので、俺は衝撃吸収服を着た上に竜王の革で作った竜王鎧を着ている。前に使っていた身躱しの鎧は、損傷して修理できないか研究している。身躱しの鎧に魔力を注ぎ込むタイミングが遅くなって、損傷したのだ。
「それより、オリエンスの特徴を何か知っているか?」
『魔装魔法使いが斬ったはずなのに、ダメージを与えられなかったと報告しています。何かトリックというか、オリエンス独自の能力が有るのではないかと思います』
斬ったのにダメージを与えられなかった? タイタンスライムのような肉体を持つ悪魔なのだろうか? 見た目は、そんな感じではなかったが……。
いろいろと予想を立てて対策を話し合う。ただオリエンスの情報が少ないので、徹底的な対策は立てられない。
翌日、起きてレトルト雑炊を温めて食べた。それから野営の道具を片付けて中ボス部屋に向かう。中ボス部屋の入り口から中を覗くと、オリエンスが居た。
俺はいくつかの指輪を嵌め、衝撃吸収服のスイッチを入れる。そして、『マグネティックバリア』を発動しD粒子磁気コアを首に掛けて深呼吸。
気合を入れた俺はエルモアと為五郎を従えて、中ボス部屋に入った。俺はウォーミングアップを始めながら、光剣クラウ・ソラスを構える。
オリエンスが振り向いてニヤリと笑った。俺は『バーストショットガン』を発動し三十本の小型爆轟パイルを放つ。オリエンスがどんな反応をするか調べるためである。
小型爆轟パイルが飛んでいる間に、『韋駄天の指輪』に魔力を流し込み始める。エルモアと為五郎も高速戦闘の準備を始めたはずだ。
オリエンスは小型爆轟パイルに気付いて、素早く避けた。その動きはレッドオーガに匹敵するだろう。そのオリエンスが手の上に炎を浮かび上がらせ、それを俺に向かって放つ。
俺は横に跳んで避けようとしたが、炎弾が追尾してきた。磁気バリアを展開して、炎弾を受け止める。その瞬間、ドンという大気を震わせる爆発音が響き渡り予想以上に大きな爆発が起きた。
エルモアが絶海槍を構えて、オリエンスに突撃した。悪魔は炎を纏う剣を取り出して、絶海槍の攻撃を受け流した。エルモアは絶海槍を
炎の剣が槍の穂を受け止め、オリエンスの足がエルモアの腹に叩き込まれた。エルモアの身体が宙を舞い、地面に落ちて転がる。悪魔のパワーはエルモアを凌駕しているようだ。
オリエンスの注意がエルモアに集中した瞬間、素早く近付いた俺は、光剣クラウ・ソラスに一気に魔力を流し込み、フォトンブレードを形成し悪魔の胴体に叩き込んだ。
フォトンブレードが悪魔の胴を斬り裂いたと思った瞬間、炎の剣が俺に向かって振られた。反射的に後ろに跳んで剣を躱した俺は、オリエンスを観察する。
何のダメージも受けていないように見える。おかしいのはちゃんと服は切れた痕が残っているという事だ。俺は『ガイディドブリット』を発動しオリエンスの頭をロックオンすると、D粒子誘導弾を放った。
D粒子誘導弾を避けようとしたオリエンスは、追尾して来るのに気付いて炎弾で迎撃する。その直後、為五郎が放った雷鎚『ミョルニル』が頭に命中し、悪魔の顔を歪ませた。命中した瞬間、火花放電のスパークが発生したが、まだ弱い。為五郎が新しい武器に慣れていないのだ。
戻ってきたミョルニルをキャッチした為五郎を、オリエンスがギョロリと睨む。その顔には傷が残っており、全身から怒気を放ち始めている。
オリエンスの怒号が響き渡り、その身体が大きくなったように見えた。強力な魔法を発動しようとしていると感じた俺は、もう一度D粒子誘導弾を放ち悪魔の頭を狙う。
魔法の発動を中止したオリエンスは、炎弾で迎撃する。どうやら頭が弱点だというのは確実らしい。俺は戦いを長引かせるのは不利になると感じて、素早さを八倍にまで上げる。
オリエンスの動きが遅くなったように感じ始めた俺は、素早く近付いてフォトンブレードで首を薙ぎ払う。悪魔の首が刎ね飛んだ。だが、それは床に落ちずに胴体上に戻ってきた。
何だ、それ? そう思った瞬間、オリエンスの周囲から炎が噴き出した。俺は『フラッシュムーブ』を発動し、身体を後方へ移動させる。
炎に包まれたオリエンスの身体が変化した。首から上は変わらずに、首から下がスケルトンのように骨だけになったのである。しかも、その骨は真っ黒で炎を纏っている。
『アンデッドの悪魔なのでしょうか?』
「それならフォトンブレードが効果的なはずだ」
全てがスケルトンにならずに、首から上が生首なのが気持ち悪い。黒い骨だけの手の上に黒い炎が生まれ、それが炎弾となって飛んできた。
俺はフォトンブレードで炎弾を斬り落として、後ろに跳んだ。エルモアと為五郎が『クラッシュボールⅡ』で攻撃したが、黒い炎弾で迎撃される。
そのたびに爆発音が響き渡り、爆風が身体を押す。この炎弾の発動速度が、俺の『クラッシュボール』並みに早い。黒い炎弾が放たれ、俺は磁気バリアを展開して防ぐ。
お互いの魔法が衝突して発生した爆風を、磁気バリアが耐える。首に掛けているD粒子磁気コアが急激に小さくなり消えた。
通常の炎弾より、黒い炎弾は威力が数倍も上らしい。俺はフォトンブレードを消すと、エルモアと為五郎に合図した。エルモアは『ティターンプッシュ』を発動しティターンプレートを放ち、為五郎はミョルニルを悪魔の頭目掛けて投げる。
オリエンスは二方向からの攻撃を、黒い炎弾で迎撃した。その瞬間、俺は『フラッシュムーブ』を使って、悪魔の懐に飛び込み、光剣クラウ・ソラスでオリエンスの頭を斬り裂いた。
その一撃で悪魔の動きが止まる。俺は一気に魔力を光剣クラウ・ソラスに流し込んで、フォトンブレードを形成すると醜く歪んだ顔に光の刃を滑り込ませ真っ二つにする。
その一撃がオリエンスを仕留めた。不気味な姿が消えたのを確かめた俺は、中ボス部屋の中を確かめた。宝箱が出現している。俺は大きく息を吐き出して、全身から力を抜く。
『まずはドロップ品を確かめましょう』
メティスの声でドロップ品を探し始めた。
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