乱歩のまなざし

作者 飯田太朗

乱歩の視点、言われてみれば確かに!

  • ★★★ Excellent!!!

この主人公、めちゃくちゃ俗っぽい!
本を読み続ける起点は人それぞれだと思いますが、、
私の場合は主人公が好きになれるか否か、この一点に尽きます。
そして俗っぽいと称した「乱歩のまなざし」の主人公「私」ですが、
この人は好き、と頷くに十分過ぎる魅力を備えています。

本作は「私」が視点になる一人称の小説です。
お金欲しさに主人公が応募した怪しげなバイトに端を発し、
卒業論文に奮闘(?)する様が描かれていきます。

「私」の心情が駄々漏れの物語では、
子供と大人の狭間に揺れる欲望に塗れた本音や、
読んでいて思わず、死ね男子、と叫びたくなるようなあるある話、
バイト先で登場するデリカシーのないイケメンへの感情に爆笑し、
お父さんとのやり取りでは胸を暖かくさせてくれるなど、
大学生のリアルな現代ドラマとしてもお勧めです。

そしてタイトルになっている乱歩といえば、江戸川乱歩。
ミステリー小説界のレジェンドですが、
本作のミステリーはレビューを書いている2021/2/27現在、
殺人はおろか、あからさまな事件が起きるわけでもありません。
主人公の視点が日常のなかに謎を見つけ出し、
そこに興味と理解で踏み込んでいくようなお話に見受けられます。
ここで重要になるのが、乱歩のまなざし、というタイトルです。

江戸川乱歩が好きな方なら、
このタイトルの意味が作中で示されたとき、
なるほどね、と思わず手を打つのではないでしょうか。
私は、ああ確かに、と思うと同時に、
この題材に取り組む姿勢を見せた「私」がもっと好きになりました。

ミステリーが好きな方は、
初野晴や米澤穂信に代表される日常の謎というジャンルに、
こういう話の作りもあるんだ、と唸らせると思います。

普段はミステリーなんて読まないよという方には、
難しいことは考えずに、リアルな大学生の「私」が紡ぐ物語を楽しめば、
いつの間にか「乱歩のまなざし」を会得しているでしょう。

作中では乱歩のほか、ミステリーなら東野圭吾、
他にも有川浩や森見登美彦の名前が登場します。
触れてきた本を通じて、「私」が輪郭を帯びていくのも面白く、
こんな作家さんが好きな方にもお勧めです。
是非是非、ご覧下さい!

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★★★ Excellent!!!

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