第29話 インド料理店にて


 2人が向かったのは渋谷の道玄坂にあるインド料理のお店だった。


 西ヶ原から一度永田町まで出て半蔵門線に乗り換えて渋谷駅で降りて歩いた。



 お洒落な店内に入り名前を言うと店員が予約席まで案内してくれる。


 2人が席に着くと店員は奥の方に消えていった。


 「瞬、大丈夫?この店高いんじゃないの?」


 「いや、それほどじゃないよ、心配しないで」


 「え、うん、なんかお金持ちになった気分だ」


 「はは、そうか、喜んで頂けましたか?お嬢様」


 「満足じゃ、苦しゅうないぞ」



 2人とも顔が緩んでいた。


 ちょっと久しぶりにこんな気分になったのかもしれない。


 きれいな器に入れられた小分けされた料理が次々と目の前に運ばれてくる。


 食事を取っていると赤ワインが運ばれてきた。


 のどが渇いていた2人は一気にワインを飲み干す。


 すぐに次のワインが注がれる。


 ワインが進み2人とも少し酔いが回ってきたようだ。


 凛の目が潤んで見えて、色っぽく見える。


 「ねえ、瞬」


 「ん?」


 「何でもない」


 「なんだよ?」


 「ん、っとね、好きだよ・・」凛は顔を赤くしている。


 「ああ、ありがとう」


 「ね、たまにはホテルとか行かない?」


 「うん、いこっか、近くにたくさんあるよね」


 「うん、ちょっと歩けないかも」


 「え?そんなに飲んだっけ?」


 「少しハイペースだったかも、油断したわ」


 「そっか、緊張しっぱなしだったもんな」


 会計のために立ち上がろうとすると凛はふらふらしていた。


 瞬が凛の腰を抱えて支える。

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