第4話 真犯人
女は家に帰宅して荷物をおろし流石に疲弊したのか一度茶の間に置いてある座布団の上に座った。目の前に置いてある卓袱台に両肘をつけ頭を抱えていた。それから女は体を震わせ息を小刻みにはいていた
「ふっふっふっふっふ」
まるで気分が悪そうな息遣いだった。そして女は息を大きくはいて
「はーーーーーーーっはっはっは」
それは歓喜の笑いだった。
女はカバンの中から何かを取り出し台所へと向かった。女は笑いが止まらなかった。「こんなに上手くいくなんてね」
それから流し台に何かを流そうとした時だった。
「そこまでよ!」
見ず知らずの声が聞こえ後女は鎖のようなもので体を拘束された。腕と体を一緒に巻かれ身動きが取れなくなった。
「な、何よこれ!」
その鎖はなんだか冷たかった。
「こ、氷の鎖?」
すると後ろから白い制服を着た女が現れたので女は
「あなた、何勝手に人のうちに入ってるのよ!」
と声を荒げたがその白制服の女の背後にはなぜか見覚えのある顔があった
「ありがとうサキ、尾行と決定的証拠を取り押さえてくれて。」
そこにいたのはイスカとアルドだった。
「裏で手引きしたのはあなたですね」
そうイスカが話しかけた女は緑色の短髪の女であった。
「あなたたち何するの。こんなことして許されると思っているの!」
そんな緑色の短髪の女を横目にイスカは何かを拾った。
「今あなたが流し台に流そうとした水筒の中身、睡眠薬が混ざっているね」
「なんでわかるんだ?」
アルドはまたイスカに驚かされる。
「少し疑問に思ったんだ。被害者は今回の事件の初めから入浴しているにもかかわらず殺害されるまでずっと湯に浸かっていたんだ。彼女が元々長風呂体質だったのかもしれないが殺害される寸前悲鳴や何かしら抵抗した音とかを黄色の長髪の女性が聞いていても正直不思議じゃない。しかし黄色の長髪の女性からはそのような供述はなかった。そうすると被害者はもしかしたらすでに意識がなくなっていた可能性があると。あとそれと白髪の男性が道中緑色の短髪の女性から水をもらった場面があったね。その時の水筒の色は供述だと赤色と言っていてそして暖簾の前で被害者に飲ませた水筒の色は青色で当の本人は飲むのを拒んだね。そうなるとその青色の水筒は飲んではいけない何かが入っているとも考えられるんだ。まあ論より証拠。この水筒の中の成分を調べてくれないかい。」
イスカがそう言うと調査員が現れて水筒を受け取った。
「その必要はないわ。」
緑色の短髪の女が止める。
「あなたすごいわね。恐れ入ったわ。」
体を洗い場に凭れ掛からせにが笑いをし開き直った様子だった。
「けど残念。満点はあげられないは。99点てところね」
「残り1点はなんだい?」
「それは睡眠薬ではないわ。神経衰退薬で言ってしまえば毒薬ね。」
「何が違うんだい?睡眠薬と?」
「睡眠薬は眠りにつくけれど神経衰退薬は眠らずただ全身の力が入らなくなるのよ。だから死んだ彼女は白髪の男に殺されることがわかった状態で悲鳴も何もあげず首を切られたわけよ」
「酷いな、」
アルドはしかめ面をしながら呟いた。
「だけれどもわからないのはあなたの行動が初めから白髪の男が被害者を殺害することを見越しているようだったけれども?」
イスカが首を傾げながら緑色の短髪の女に問う
「いいわここまできたのだからあらいざらい話すわ。まず私にとってあの2人は邪魔な存在だったわ」
「嘘だろ」
アルドは静聴するつもりだったが思わず心の声が出てしまう
「白髪の男が言っていた通り私たちはあの青色の長髪の女の父親によって雇われていて常に彼らの顔色を伺いながら働いていたわ。そんな日々のなか私は薬草を使ってある実験を行っていたわ。それは不死の薬草の開発よ。それを売りさばいて大金を手にし彼らの元を離れようとしたの。まあ実験を繰り返す中で犠牲者を多くだしたけどね。それを嗅ぎ回ってか青色の長髪の女が色々私に問い詰めてきたわ。夜な夜な何をしているのか行動を記録してきたの。そしてそれとは別に私の実験を偶然知ってしまった人がいたの。それがあの白髪の男よ。まあ案の定犠牲者のことまでは知られなかったからとりあえずよかったけど私にとっては邪魔な存在だったことは確かね。そこで色仕掛けをして彼の心を奪い不死の薬草が完成したら一緒に抜け出そうと唆して完全に心をコントロールしてやったわ。あの青色の長髪の女から日々いじめられていて薬草の開発の邪魔をしてくるのなんて言って泣いた振りをしたら彼は俺がなんとかするって言ったのよ。別の日にはあいつがいなくなればなんてつぶやいていたもんだからとうとう殺意が芽生えたんだって思ったわ。バカな男ね。それから青色の長髪の女は私と白髪の男が最近距離が近いことを知り怪しみ始めたの。それで温泉に行くって言ったら青色の長髪の女は私もついて行くわって言ったからもしかしたら白髪の男がアクション起こすかもしれないって考えたわけ。」
それを聞いていたその場の全員が凍った。話が悍ましすぎて黙り込んでしまった。しかし沈黙を破ったのはサキだった。
「そんな、そんな人のことをゴミのように、粗末に扱って!」
サキは憤怒し緑色の短髪の女を縛っている氷の鎖がものすごい勢いで力強く締め付けた。緑色の短髪の女はうめき声をあげ
「サキ!やめるんだ!」
イスカがサキに怒鳴りつけた。
「はあ、はあ、一つ聞かせて欲しいのだけど」
緑色の短髪の女がイスカに問うた
「どうして、どうしてまほろばの湯で青色の水筒のことを指摘しなかったの?」
「2通り考えていたんだ。もしあそこで指摘したとしてあなたが逆上でもして水筒の口を開き温泉の中に捨てでもしたら証拠がなくなってしまうこと。もしくは私がくる前に中身を捨ててしまってもう証拠が残っていない可能性。その場合だったら正直お手上げだったけどね。まあどちらにしろあの場で指摘するのは得策ではないと考えたんだ。そこであなたがまほろばの湯から家に着くまでの間、あと家の中でここにいるサキにあなたが水筒に手を出して中身を捨てるようなことがあったら拘束してもらうようにお願いしたんだ。案の定中身は捨てていなかったようだったから証拠を押さえることができてよかったよ。だけどあなたも用心深いのかなかなか捨てないからヒヤヒヤしたよ。流石に家の中だと油断したようだけどね。」
「ふっふっふっふ。はーーーーっはっっはっっは」
緑色の短髪の女は愉快に笑う
「どうやらそのアルドって子に話を聞いてすぐに私があの男を唆したこと見越し、あらかじめその白制服の女の子に協力を要請していたようだね。」
緑色の短髪の女は笑いが止まらない
「はーーー、つくづく私は天に見放されてしまっているようだ。」
それからイスカをにらめつけた
「私からしたらお前は悪魔だよ。」
「私からしたらあなたは死神です。」
それからのこと調査員は死神を拘束し連行した。後日調査員は死神が使用したとされる実験現場を発見したもののそこは吐き気が催す光景であったため語られることはなかった。牢獄の中では断末魔のような叫び声が響き渡っていた。
「もう少し!もう少しだったのにーーーーー!あの悪魔!あの悪魔ーーーーーーーーー!」
死神の嘆きが深くどす黒い空間を切り裂いていた
数日後。アルドはIDEA作戦室を訪れた。
「イスカ、サキ、この前は本当にありがとう。おかげで事件が無事に解決されたよ。」
「気にしないでくれアルド。私は私ができることをしたまでだよ。」
「それにしてもアルドさんとんでもない事件に巻き込まれてしまいましたね。」
するとイスカは笑いながら
「でもアルドが行くところ行くところ必ず何かが起きるね」
「アルドさんが旅をしなかったら平和になるんじゃないですか」
笑うイスカとサキ
「あのな、お前ら」
「冗談ですって。冗談。」
仕切り直そうと咳払いをしイスカに手紙を渡した。
「なんだいこれは」
「ほらあの時イスカが救った黄色の長髪の女の子だよ。その子からイスカへ手紙を渡してほしいって言われたんだ。」
イスカは手紙を受け取りその中身を読んだ。
「イスカさん。この前の事件本当にありがとうございました。おかげでもう少しで殺人犯というレッテルを貼られてしまうところでした。感謝しても仕切れません。それでお礼がしたいのですが今度一緒にまほろばの湯でゆっくりしませんか。事件が起きた後で気味が悪いかもしれませんがここの温泉は本当に心地が良い観光名所なんです。それにイスカさんがいたらとても心強いですし。あとアルドさんとサキさんもご一緒に連れてきていただけないでしょうか。お二人にもお礼がしたいのです。
それと最後にイスカさんに僭越ながらお願いがあるのですが友達になっていただけないでしょうか。このままただ助けられただけでは歯痒い気持ちでいたたまれないのです。だからイスカさんが困っていたら今度は私が友達として助けに行きたいですからね。」
イスカが読んでいる横でアルドとサキが覗き読みをしていた。
「ぐす、本当によかったですね。」
「そうだな」
「なあアルド。その黄色の長髪の女の子の名前はなんて言うんだい?」
「ああ、確かジャンヌって言ってたかな」
「ジャンヌか。とても誇らしい名前だね。よし!それじゃあ今度ジャンヌに3人で出会いに行こうか」
「それでまほろばの湯に入るんですね。楽しみだな。」
「まあ私たちが入浴の間アルドは外で待ってもらうことになるけどね」
「ええ!またかよ!」
アルドは首を下に折り曲げた
まほろばの湯殺人事件 今井 光 @monmon12345
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