三百三話 光3

「ヨーテル!! ホーズキ!!」



壁に激突した二人は

そのまま地面に倒れこみ、

ピクリとも動かない。




「我を忘れるな。

貴様らなどいつでも殺せる。」




鬼灯とヨーテルの元に駆け寄るカクバに

タチアナは言った。




「息はある......」




カクバはその言葉に耳を貸さず、

ヨーテルと鬼灯の安否を確認する。



「......もう容赦しねぇぞおおお!!!!」




そして、カクバは憤怒の形相で吠えた。



たとえ、相手が元仲間のタチアナで

あったとしても。

これまで共に努力してきた

友人であったとしても。

もうカクバに躊躇いの気持ちなど

一切無かった。



殺す。タチアナを殺す。

ただ、それだけ。

タチアナ以外の物などカクバの

目には入っていなかった。




「風神!!!」



カクバは体を高速で回転し、

竜巻を発生させた。

その発生させた竜巻を

残された左手へと集めていく。



その竜巻はまるで生き物のように

カクバの握り拳にまとわりつき、

最終的にはヒュンヒュンヒュンヒュン

と音を立てて、カクバの拳の中に

収まった。



「ほう......」



タチアナは一目で、

カクバの拳の中に途轍もない

エネルギーが凝縮されているのに

気づき、少し興味深そうな表情を

浮かべる。



だが、それにカクバは臆することなく

突っ込んだ。

今自分が出せる最高の技を

この拳に秘めて......カクバは

無我夢中でタチアナに突撃した。



カクバが通った地面は台風のような

風が発生して小石が飛び散る。



「これは見物だな。」



タチアナはカクバの拳が届く

一歩手前でそう呟く。



「しねぇえええええええええええ!!!」



対してカクバは、憎しみと怒りを

込めて拳を振り抜いたのだった。




ドゥギュッ!!



鈍い音と共にカクバは確かに

拳が相手の体を貫いたのを

感じた。



.........勝った。




カクバはそう確信しながら、

自分の拳がタチアナの心臓部を

貫いているかを改めて確認する為、

顔を上げた。



「なっ─────」



だか、カクバの目の前にいたのは

タチアナではなかった。

カクバの拳を受け止めたのは、

親友であるバーゼンだった。



「ゴホッ......」



バーゼンの腹部は見るに耐えない程、

破壊されており、口からは絶えず血を

吐き続けている。



「な、なんで......なんでだよ!!

バーゼン!!!!」



カクバは動揺しながらも、

自分の左腕をバーゼンから抜いた。

その時カクバは、バーゼンの後ろに

にタチアナがいるのを見た。



まさか、この後に及んで......バーゼンの

奴......タチアナを庇ったのか!?

鬼灯やヨーテルがあんな目にあった

ってのに!!

なんでだよ!! なんでお前は

そこまでタチアナを守るんだ!!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る