二百六十九話 魔王城2

「オラオラ! 進め、進め!

魔王城はもう目の前だぞ!!」



襲いかかる魔族をなぎ倒し、

誰よりも先へと先陣を切っていた

カクバだったが



「どぅお!?」



目の前に何かが空から降ってくる。

危うくそれに当たりそうになったが、

自前の瞬発力でギリギリかわした。



カクバは落ちてきた物体が何かを

確認するため、慎重に近づく。



「!? ヨーテル......?」



なんと目の前に空から降ってきた

正体はヨーテルだった。



「おい! 大丈夫か!?」



カクバは物凄いスピードで地面に

叩きつけられてしまったヨーテルを

心配して声をかけると......



「あいつ!! よくもやったわね!!」



何も悪くないカクバはブチ切れの

ヨーテルに睨み付けられてしまった。



「どうしたのだよ。」



そのヨーテルの怒りの声を聞いて

近くにいたバーゼンも駆けつけたが、

あぁん? とヨーテルはバーゼンにも

ガンを飛ばす。



「な、なんなのだよ、その目は......」



その鋭い目付きに尻込みした

バーゼンを無視して、ヨーテルは

空を見上げて叫んだ。



「降りて来なさいよ! いつまで

私のほうきにそのきったない

足で乗ってるつもりよ!!」



カクバとバーゼンも空を見上げて

みると、そこには自分たちを

見下すピエロがいた。



「誰であろうと俺に対して

頭か高い奴は許さないぞ。」



そう言って、まるで紙のように

ヒラヒラとそのピエロはヨーテル達の

元に降りてくる。

その無防備な降り方をするピエロを、

バーゼンが見逃すはずもなく



「どちらにせよ、お前が俺達の

敵であることに変わりはないのだよ。」



と、銃弾を放つが、そのピエロは

かわすという動作をすることも

無くひらっと銃弾を避けた。

それはまるで宙に浮いた紙を

人の手で掴もうとした時と

同じ現象だった。



「なんだ? あの魔族......なんか

動きが変だ......」



「まるであの魔族には重さを

感じないのだよ。」



「馬鹿じゃないの? 銃弾とか、

旧来の武器が効くはずないじゃない。

見てなさい! 雷神の槍!」



いつものようにバーゼンをディスった

ヨーテルは、空に雲を発生させ

一筋の稲妻をあのピエロに

直撃させようとする。

しかし、ピエロは何か自分に

危険が迫っていることを

察知して、今度は驚異的な速度で

地面に落下してくる。



「来るぞ!」



カクバは思わず二人に忠告したが、

既にヨーテルとバーゼンはいつでも

来いと身構えていた。

が、そのピエロの落下スピードは

ぐんぐん上がっていき、やがて

見えなくなった。



そして



肉眼で捉えられないほどの速度まで

達したそのピエロは、三人の目と鼻の先

まで接近し、腕をクロスして自身の

魔法を発動した。



「グラビティー!」


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