二百三十六話 五年前2

たまたま朝食でふと牛喜さんに

五年前のことって知ってますか?

と聞いてみたが、まさかここが

その島だとは夢にも思わなかった。

更についてることに今は長老の

体力が回復するまでこの島に

滞在するらしいから、俺も

五年前のことについて何か

分かるかもしれない。



俺は食堂から出ると荷物を整理し、

五年前のことに詳しいという

タチアナの兄ちゃんに会いにいくため

部屋を出ようとすると、ピッ!

と俺も連れてけアピールをペルーに

された。

ずっと部屋の中にいてはつまん

ないだろうし、この島にはラーバ

以外の魔族はいなさそうだから

連れていってもいいかと

ペルーを肩に乗せる。



「ペルー、また大きくなったな。

成長期か?」



そうペルーに言いながら

部屋から出ると



「隼人、どこかに行くのか?」



ばったりタチアナに会った。



「ああ。えっと......お前の兄ちゃんに

ちょっとな。」



「兄様に?」



「まあ、聞きたいことがあって......」



俺は自分の頬をかきながら

目を泳がす。

前、タチアナに五年前のことを

聞いたときタチアナは何故か

わからないが気絶してしまった

ことがある。

だから、あまり今からそのことに

ついて聞きに行くとは言いずらかった。

しかし、タチアナは



「聞きたいこと?」



と尋ねてくる。



なんと言おうか迷っていると

意外にもタチアナから



「もしかしてここで五年前に部隊が

全滅したことについて隼人も

調べようとしているのか?」



と彼女から言ってきた。



「そ、そうなんだ。前、エレディア村

でさ聞いただろ?」



すると、タチアナは眉をしかめる。



「そうだったか?」



「え、あ、いや。悪い。俺の

勘違いだったかも。忘れてくれ。」



「そうか。まあいい。であれば、

私も一緒に行くとしよう。

私がいた方が君も兄様に話しかけ

易いだろう。」



「あ、ああ。助かるよ。」



俺はなんとか自分の失言を誤魔化し、

タチアナの後をついていく。



覚えてないか......



時間が経てば記憶は段々回復

していくものだし、もしかしたら

覚えてるかもと思ったが、

タチアナは少しも覚えている

ようでは無く、小さく鼻歌を

歌いながら俺の先を行く。



その後ろ姿から何か不気味な

物を俺はひしひしと感じるのだった。

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