二百二十八話 仲間の捜索26

「あの人はこの世界では

一番強い人なんだろ?」



「......勿論だ。彼ほど皆に慕われ、

頼りにされる人はいない。」



「なら、あとは信じて待つだけだ。

な?」



隼人の言葉に不安そうなタチアナは

ゆっくりと頷いた。



隼人はタチアナが落ち着いたのを

確認して長老の向かった先を

見る。

隼人も実際少し不安だった。

しかし、ここで自分が助けに行って

タチアナとヨーテルがさっきみたいな

強敵に襲われたらと考えると

ここで一緒に待つのが一番だと

判断した。

それに、実は隼人には

長老があのラーバに勝てるという

勝算が少しあった。

長老は冷静で長年の経験もあり、

特に周りが見えているということを

隼人は直接長老と話したとき

に感じた。

だから、そんな彼がこの

罠だらけの島で、呪術の

対策無しに一人で突っ走る

訳がない。

きっと自分達に一人で行く

と言ったのは、呪術に対して何らかの

対策があるのではと隼人は

考えた。

だから、きっと大丈夫。

そう隼人も自分に言い聞かせた。















「では、お口を失礼します。」



ちょうどその頃。

罠にかかり身動きの取れない

長老はラーバに口を無理やり開けられ

そうになっていた。



「っ!!」



そのラーバの指に長老は噛みつく。



「ちっ! 往生際が悪いですよ。

大人しく──」



その時、ラーバはあることに

気がつく。



「その目は何です? 人にしては

珍しい眼球をしていますね。」



ラーバが不審に思ったのは

長老の右目だった。

長老の右目だけ、何やら

青い光が明滅している。



「ああ、これかの......これは

水晶石じゃ。」



「水晶石?」



何を言っているんだとラーバは

首を傾げていたが



「はかまはさたやはたかやまは

あやほゆなたなまはのちさはや......」



突如長老の口にした謎の言葉に

ラーバは顔を真っ青にして



「そ、それは呪術解除の呪文!?

何故あなたがそれを!」



と叫んだのだった。


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