二百十九話 仲間の捜索17
地面の泥には敵らしき足跡は
ない。ということは、敵はいない、
もしくは敵は空を浮遊する魔族である
ということになる。
この島に浮遊する魔族......
もしかして......あいつか......?
俺はこの世界の魔族については
詳しくはない。
だが、この島にいて空を飛び、
そしてなにより姿を消すことのできる
魔族なら心当たりがある。
もしも俺の思っているやつが
この犯人だとしたら......
「タチアナ!」
俺はそのことを伝えようと
後ろを振りかえる。
「!?」
しかし、そこにタチアナの姿はなかった。
いたのはほうきにまたがっている
ヨーテルと、長老の二人のみ。
「くそっ! 今ならまだ......!」
俺の声に長老とヨーテルは振り
かえって、タチアナがいなくなって
いることを把握し、驚いていた
ようだが、今は彼らにそれを説明
する余裕はない。
「ヒール!」
俺は自分のかけられる広範囲にヒールを
かける。
そうこれは以前、俺がとある魔族の
居場所をつきとめるために使った
方法だ。
案の定、十メートル程離れた霧の
中にヒールによって青く光輝く
二つの物体を黙視することが
できた。
俺は素早くその霧の中に飛び込み、
適当にその青い光を掴む。
「捕まえた!」
俺がつかんだのはタチアナの
方だった。
そして、俺がタチアナを引っ張ると
もう一方の青い光はタチアナを
手放してすっと霧の奥に消える。
それを見逃すまいと俺は
追い討ちをかけようとしたが、
俺よりも早くその青い光を追いか
けたのは、長老だった。
長老は俺にも負けないぐらいの
猛スピードでその青い光を捕まえ、
地面に叩き潰す。
長老にはその正体がもうすでに
わかっているようだ。
「ちょっと二人ともどうしたの......
ってタチアナ!」
すると、今度はヨーテルが俺
の元に駆けつけ、タチアナを
見ると驚きと安堵が入り交じった
表情を浮かべた。
「大丈夫なの、タチアナ。」
「今、見てみます。感受。」
俺は目を覚まさずぐったりと
しているタチアナの容態を確かめるが
特に異常はない。
気絶でもさせられたのだろう。
ならばと、俺はタチアナの
額に手を当て
「ショック!」
と軽い電気を流す。
「あっ!!!!」
すると、タチアナは体を
一瞬びくんっと跳ねさせ
目を覚ました。
「起きたか、タチアナ。」
「もー、心配したわよ!」
「隼人......ヨーテル......私は
一体......そうだ! 先程、何者かが
私の背後から──」
「大丈夫だ。今その何者かと
長老が戦ってるよ。」
そう言って俺は未だ青い光のままの
あいつと睨み合っている長老を
指差した。
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