百九十六話 再開を夢見て10

それからというもの、少年は

その思いを胸に体や精神を

鍛え始めた。

今まで散々自分をいじめてきた

いじめっ子どもに反抗し、

困っている人がいたら必ず助ける。

ほかにも、少年はエレディア村で

自分を磨き続け、いつしか

彼が青年になる頃には、

彼は村一番の力持ちだとか、聖人

だとか言われるようになり、

彼自身も一人称を僕から俺と

言うようになっていった。

ただ、彼は彼女の前では

僕と言っていた。

それは、彼女が自分よりも高貴な

存在過ぎて、自分を大人に見せることが

恥ずかしかったから。



それからまたしばらく彼と彼女の

密会は続き、いつしか彼女も

そんな彼に恋心を抱き始めた頃。



「そう拒まず......今私たちの

味方になれば、必ずや近い将来

あなた方にも利益があるかと──」



「私は人と敵対することなんて

望んでいません! 帰って!」



魔族の幹部が来訪し、人魚姫に

魚人族が魔族に参加するようにと

お願いすることがしばしばあった。




「はぁ......参りましたね。

あの頑固な魚を説得させないことには

どうにもならないというのに......」



そう愚痴をこぼしながら

ラーバは海の中を帰る。

というのも魚人族の社会政治は

人魚姫一人が全てを統括する。

人魚姫が首を縦に振ればその場で

魚人族は魔族に仲間入りをするが、

横に振れば決して仲間入りすることは

ないという程の権力が人魚姫には

あった。

だから、なかなか首を縦に振らない

人魚姫にラーバは嫌気がさしていた。

そんな時



「おや? あれは......」



その帰り際でこっそり城を抜け出す

人魚姫を見つけた。

ラーバはこれは何かありそうだと

透明になり、後をつける。



「僕は姫様と

一緒にいたいです。」



後をつけたラーバがたどり着いた

そこには、自分の思いを告げる

ナギと人魚姫がいた。



これは使える......



それを見た

ラーバは不敵に笑ったのだった。

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