百九十三話 再開を夢見て7
「あの魔族ならあの場をおさめること
ができそうね。」
ヨーテルはびっしょりと濡れた服を
絞りながらそう呟く。
「おい! だから魔族って──」
「何!?」
「......いや、その......」
「ビール......もうお前止めとけって......」
「くそ......」
「てか、あんた達はあそこに行かなくて
いいの? その人魚とやらが危ないん
じゃない?」
「仕方ないだろ! 俺たちが
お前ら人間と一緒にいるとこ
見られたら、俺たちは反逆者扱い
される。」
ビールは未だにヨーテルのことが
怖いようで、ワインの
後ろに隠れながらそう言う。
ヨーテル、ワイン、ビールは
人魚姫を無事目覚めさせることに
成功し、今は人気のない陸で
人魚姫が人間と魚人の争いを
止めているのを遠目に見ていた。
「別にいいじゃない。あんたたちは
私たち人間の力をかりて、人魚を
目覚めさせられたんだから。」
「別にお前らの力をかりて......」
「は? 殺されたいの?」
「い、いえ......」
流石に心が折れたのかビールは
まるで借りてきた子猫のように
大人しくなった。
「でも、お前の言う通りだ。
お前たち人間の力がなかったら、
これから先、人魚姫様が目覚める
ことはなかったかもしれない。
ありがとう! 本当に......本当に感謝
している。」
ワインは深々とヨーテルに
頭を下げた。
「べべべ、別にいいわよ!
そんな改まって言わなくても!
第一、お礼を言うならそこの
回復魔法士に言えば......って......
あれ?」
ヨーテルは反射的にその回復魔法士が
さっきまで立っていた方を見たが
「な、なんであいついないのよ!!!」
「あの人間なら行きたいとこが
あるってさっき──」
「は!? この私に断りもなく
いなくなったわけ!?
もうなんなのよ! あいつ!」
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