百八十二話 海底の城7

「ナギ、ナギはどこ!?」



「ナギ? 姫様。一体なんのことに

ございますか?」



「ばーや。ナギが危険なの。今すぐ

海底洞窟に連れていって!」



「ひ、姫様! 落ち着いてくださいませ!

そのなぎとはなんなのです。」



「ナギは......ナギは......」



まだ目覚めて間のないからなのか、

喋りがおかしい。

頭の整理が追い付いていないように

見える。



「あ、あなたたち知らない!?

そう、君と同じくらいの

人の子なんだけど。」



そう言って人魚姫は俺にしがみついて

尋ねてくる。



「すみませんが、そのナギという人は

知りません。それよりも、人魚姫様は

百年前のことを覚えているんですか?」



「ええ! もちろん。だって

ついさっきまで私はナギと

海底洞窟で会っていたんですもの。」



「姫様......お気を確かに。

先ほども申し上げたように

姫様は今まで百年もの間眠って

おられたのです。」



「......」



それを聞いて再び人魚姫は黙りこむ。

すると、それを見かねたワインは

人魚姫に歩みより、

あなたが百年間どういう経緯で

眠りについたのか、

そしてなぜここに人間がいるのかを

ご老人と人魚姫に説明した。



「左様でしたか......あなた方が

姫様を目覚めさせてくださったのですね。

そうとも知らず、先ほどはご無礼を......

どうかお許しください。」



「いえ、いいんです。敵である

俺たちがいたら驚くのも

無理ありません。」



「敵!? どういうこと?」



「人魚姫様。今現在俺たち魚人族は

人間と敵対しているのです。」



「!? エレディア村の民とは

友好的な関係だったはずよ。

それがどうして──」



「それは先ほど自分が説明した

ように、姫様を刺した謎の

人間を、俺達魚人族が未だに

恨んでいるからです。」



「本当なの? ばーや......」



衝撃の真実を告げられた

人魚姫はまるで嘘だと言ってほしいように、

ご老人を見る。



「本当にございます。」

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